Attuned

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「日本人のモチベーションの源泉」は外国と違うのか?

Attunedの結果から見えたこと

序文:
組織心理学をベースとし、科学的に検証された方法でエンゲージメントを「見える化」するモチベーター診断Attuned。欧米、日本を中心にAttunedを診断したデータを比較・分析されたのが、ピープルアナリティクスに精通し、Attunedの開発に貢献してきたDaniel Bodonyiさんです。

Danielさんは企業やNPOのコンサルティングのかたわら、ブダペストに拠点をおくInternational Business Schoolで講師もされています。Attunedの結果から浮かび上がってきた、日本人の価値観に関する意外な事実とは何なのでしょうか? そして、Attunedを組織やチームのマネジメントに活かすための方策についてお聞きしました。

Daniel Bodonyi, Certified People, Analytics and Product Geek

――Attunedのデータを日本と他国とで比較調査された目的は何でしたか?

私は数年間、東京に住んでいたこともあり、日本企業のクライアントと接する機会もありました。日本は他の欧米諸国と比べて、コミュニケーションの取り方や企業内のコンセンサスのとり方、働き方など、さまざまな点で独自性が高い印象をもっていました。

Attunedは仕事においてモチベーションをかきたてられるもの(モチベーター)を11種類に分類し、一人の人間のなかで高い要素、低い要素をスコアリングして明らかにする診断です。具体的には、合理性・社交性・フィードバック・利他性・地位・成長・金銭面(給与や待遇のよさ)・競争性・自主性・創造性・安全性の11種類を指します。個々人が働くうえで大事にしている価値観といいかえてもよいでしょう。

これだけユニークな慣習をもつ日本人は、大事にする価値観の現れ方も、他国とは違った結果が出るのではないか。当初はそんな仮説をもっていました。

――実際の結果から明らかになったのはどのようなことでしたか?

アメリカ、ヨーロッパの国々、そして日本を含めた37,000 ものデータを比較・分析したところ 、日本人の価値観の現れ方も他国のそれと非常に似ていることがわかりました。

たとえば、日本人は一般的には他人の感情を考慮に入れて会議などの場で発言する傾向があります。しかし、だからといって「利他性」の順位が高い人が他国より多いといった結果が出るわけではありません。つまり、価値観は文化的背景の差よりも個人の差の方が大きいといえるでしょう。

文化によって大きな価値観の差がなく、あくまで個々人の個性の差をとらえるという発想に立てばいい。これは、「異なる文化背景をもつ従業員のマネジメント」に関わる人にとって、朗報ではないでしょうか。

日本人の仕事上、大事にする価値観

――日本人も他国の人々と「仕事上、大事にする価値観の現れ方」という点で非常に類似しているというのは驚きでした。この結果を踏まえて、日本企業の経営者、マネジャー層はAttunedをどう活用していくとよいでしょうか。

日本の労働人口は減少の一途をたどっており、企業の人材獲得競争も激しくなる一方です。優秀な人材のリテンションは日本企業にとって至上命題といえます。このリテンションにこそAttunedの出番です。

活用の一歩は、マネジャーが自分自身の重視している価値観について理解すること。私たちは自分の価値観について無自覚な場合も多いですから、「セルフアウェアネス(自己認識)」が重要になります。そのうえで、メンバーによって大事にする価値観がいかに異なるのか、個性が反映されるものなのかを理解することです。これが柔軟なマネジメントの大前提となります。

たとえば自分は「フィードバック」のスコアが低くても、「フィードバック」のスコアが高いメンバーには、励ましや今後のためのアドバイスを伝える頻度を増やす。こんなふうに、マネジャーは自分にとって快適なコミュニケーションとは異なるスタイルを身につけ、取り入れる必要が出てきます。

もう1つの活用方法は「オンボーディング」です。オンボーディングとは、新たに採用・配属されたメンバーに、組織や部署のルールや文化、仕事の進め方にいち早く慣れてもらうための教育・訓練プログラムのこと。

たとえば、新入社員に入社前にAttunedを受けてもらい、「自立性」のスコアが高かったとします。この場合は、あまり細かい指示は出さずに、タスクをいったん任せてみる方がよいでしょう。これに対し、「自立性」のスコアが低いメンバーならどうか。より詳しい説明の機会やゴールまでのマイルストーンをマネジャー側から設けたほうが、そのメンバーは力を発揮しやすいでしょう。

このようにAttunedを活用することで、メンバーそれぞれの強みや個性が最大限に発揮できる組織文化・チームカルチャーを構築できるのです。

――そうなるとAttunedの結果はマネジャーだけでなく、同じチームのメンバー同士で、可能な範囲でシェアしていると、相互理解やチームの一体化が進みそうですね。

そのとおりです。開示してもよいと思う範囲で互いの結果を伝え合うことにより、「この人とはこういう風に仕事を進めたほうがスムーズにいきそう」などと配慮し合えるようになります。私たちは、物事を認識しやすくするために、ステレオタイプを用いて一般化して考える傾向にあります。

ですが、本来ならステレオタイプを活用するシーンはケースバイケースが望ましいでしょう。「●●の国の出身だからこう」と考えるのは、バイアスになりかねない。一人一人の個性による違いのほうが大きいと認識する必要があります。

現在、日本の職場でも「ダイバーシティ」や、組織内のメンバーそれぞれの経験やスキル、考え方が認められ、活用されている状態を指す「インクルージョン(包摂)」の重要性が浸透してきています。性別、文化的背景、年齢などの多様性ももちろん大事ですが、マネジャー層は特に、「サイコロジカル・ダイバーシティ」、つまり心理的ダイバーシティを考慮して、組織やチームのマネジメントに活かしていただきたいと思います。

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