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【セミナーレポート】次世代リーダーの仕事の充実感を高める 心理的安全性のつくりかた

マネージャーの負担を減らす1on1を実現するには?

 近年、社員のモチベーション向上やエンゲージメントの向上に積極的に取り組む企業が増えてきています。 しかしその陰で、その取組の中核を担う「中間管理職の負担が増えている」という新たな課題が表面化していることも事実です。 2022年1月18日に開催された当セミナーでは、次世代のリーダーとなることを期待される部下の心理的安全性を向上させることで、マネージャ自身の負担と疲弊を軽減するメカニズムを解説し、ダニエル・キム元MIT教授の提唱する「成功循環モデル」における「関係性の質」を改善する具体的な手法について紹介しました。そのセミナーでの内容をレポートしていきたいと思います。


マネージャーの課題は「人を育てること」

 マネージャーの悩みとはいくつかの調査において、マネージャーの悩みの最上位は共通して「人、部下を育てる」ことであると示されています。「部下を育成できない」とはどういうことなのでしょうか。部下の反発やモチベーションの低さ、部下が自律的に動かないなどが挙げられています。この悩みに対して、マネージャーは良くしようと思って必死に部下がしっかり仕事をしているかを監視する関係性を構築してしまいます。しかし監視されると言うのは誰にとっても決して居心地の良いものではなく、また部下は与えられたKPIの達成を目指し、言われた通りのことにだけ取り組むようになり、そして部下の思考が停止してしまいます。これでは負のサイクルが生じてしまっており、結果として「部下を育成できない」ということを招いきます。一生懸命改善しようと努力しているのに、良い結果を得られないため、マネージャー自身の疲弊感や孤独感に繋がっているのです。

 学術的研究からのヒントから、「未熟な部下を育てる」と言う発想が、元凶なのかもしれないと考えられています。また近年国内外の複数の研究が、「心理的安全性と経営パフォーマンスのポジティブな関係を示唆している」とも言われています。

部下支援は、DPB(社員が会社のために行う積極的行動)の後押し

 会社が新しいことに取り組む際には、マネジメントサイドが仕事を押し付けるのではなく、現場の社員たちが課題に対して自発的に挑戦しなければ、会社に変革が起きることはありません。このような場合に求められるマネジメントのあり方とは、部下たちのDPB(Desirable Proactive Behaviors, 社員が会社のために行う積極的行動)を後押しすることです。

心理的安全性を高めることが、社員の自律の鍵

 新しいことに対する障壁を無くすためには、心理的安全性を高めることが、そもそもの障壁を無くすための有効策だと考えられます。心理的安全性とは「職場環境が対人関係のリスクを取るのに安全であると言う信念」であり、「例えどんなに些細なものであっても何かアイデアを思いついたときに、率直に皆に対して発信できること。その際に義務感を持ち合わせている状態。」のことを指します。

 DPBへのモチベーションを高めるためには、内発的動機が必要となります。例えば部下に対して何か資格を取るように指示をしたとしても、自己の成長がモチベーションの部下もいれば、他人や組織に貢献することがモチベーションの部下もいたりと様々だと思います。一人ひとりのモチベーションを見分け、資格を取ることによってどのようなメリットが得られるのかの伝え方を変えることで、積極的に行動してもらうことができるでしょう。

 内発的動機は人それぞれ異なり、外からも分かりにくく、時間をかけて見つけていく必要があります。そして心理的安全性を高めれれば、内発的動機のレベルを高めることができます。

DPBを組織文化化するためのTATモデルとは

 PDCAサイクルは今では有名で多くの人が知っていると思います。PDCAサイクルは、Planからしっかり考え始め、有効なPlanを作れることを前提にはじまります。しかしながら色々な新しい物事が生じている昨今の状況ではなかなか思うようにPlanを作ることは容易ではありません。なのでそのPDCAサイクルに代わるのがTATモデルです。TATモデル(Try Assess Tweak(挑戦 評価 微調整))とは、「全ての試みはうまくいくことがほとんどないため、全ての試みを暫定的なものとして捉え、新たな情報が入るたびに微調整をして計画を更新する」というモデルです。

 このTATモデルをうまく活用したのが、コロナワクチンを開発したモデルナ社です。元々は小さな製薬ベンチャーでしたが、今では世界最大の製薬会社のひとつにまで成長しました。彼らは非常に推測的な「もしこうだったら?」という質問を口にすることから始まり、そのアイデアを具体的なプランとし、テストと批判的フィードバックを繰り返し失敗を確認して、計画を変更するそうです。その結果短期間で会社として成長を遂げ、コロナワクチンの開発と提供に辿り着けたのです。不完全なアイデアを行き止まりではなく、成功に辿り着くために必要な積み重ねの一段として捉え、アイデアの進化を共同責任者として捉える文化が必要なのです。

TATモデルの定着

 TATモデルを実現するためには、アイデアの源泉と計画の推進者、フィードバックをしてくれる存在が必要になります。これらを担ってくれる人材として、目の前にいる部下は貴重な人材になってくると思います。そこで重要となってくるのは、部下に自分たちが自ら主体的に動き、失敗経験を積ませていくことなのです。部下が失敗などに対してプレッシャーを感じて萎縮することがないように、マネジメントをしていくべきなのです。

 このようにTATモデルに則って考えると、部下が未熟かどうか・まだ成長していないなどは関係のないもので、マネージャーが部下を育てなければならないと考える必要はなくなるのです。マネージャーの役割は、部下を育てることから、部下が積極的にアイデアを出せるようにmanageするという考え方にシフトすれば良いのです。

1on1ミーティングにおける上司のあり方

 では、1on1ミーティングにおいて「傾聴する」「賞賛する」などが部下との関係性を高めるための重要な要素であるというお話はよくお聞きするのではないでしょうか。それらを忠実に取り組むことによって、部下からすると、上司に対する好意や尊敬が高まってきます。そのため自分が思っていることを率直に話しても大丈夫なのだと安心感を得ることができるため、結果として部下からどんどんアイデアやフィードバックを引き出すことができる。

 一方でこれらを実践してもうまくはいかないという声もあるかと思います。しかしその場合の多くは、部下からせっかく引き出した悩みや意見に対して、上司が「こうすればいい」と正解やアドバイスなどの解決策を提示してしまうことが多いようです。これではTATモデルのサイクルが崩れてしまうのです。マネジメントする側の上司は、部下が思ったことを率直に話せるという心理的安全性の高い環境づくりに貢献するのだという意識を常に持って、1on1ミーティングなどに臨むことが必要なのです。

まとめ

 次世代のリーダーを束ねるマネージャーには、未熟な部下を育てるというマインドセットを止めて、部下は貴重な資源でありそれをマネジメントするという考え方にシフトすることが必要となります。そして部下との関係性の質の向上を目指すことで、心理的安全性を確保し、皆が新しいことにチャレンジングな組織風土を構築することができるのです。

 Attunedでは、心理学者であるメリッサ・タラントラ博士による、最新のホワイトペーパー「心理的安全性を高める“アフターコロナ”の職場づくり」を公開しています。企業が心理的安全性と内発的動機づけを職場文化に組み込む方法を最新の学術論文を中心に調査し、今日から始められるシンプルで効果的な戦略を紹介しています。ぜひ今回のセミナーレポートと併せてお読みください!

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