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ナッジとは?行動科学を取り入れて社員の行動を変える考え方

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ノーベル賞受賞で注目された「ナッジ」とは?

2017年、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が、行動経済学の分野での功績によりノーベル賞を受賞しました。彼が開発に携わった「ナッジ」(nudge:肘でそっと突く、後押しする)という概念が、世界中の政府や企業の間で注目を集めています。

ナッジとは、経済的なインセンティブを変えたり、行動を禁止したりすることなく、意思決定に影響を与える方法のことです。

行動科学の知見の活用により、人の心に訴えかける「ナッジ」を発動させるためにはいくつかの方法が提唱されていますが、その一つが「内発的動機づけ」を活用するものです。

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概要

内発的動機を可視化するプロジェクトを進めるAttunedは、2021年6月25日(金)に「行動科学と内発的動機で、職場を『ナッジ』する」をテーマとしたウェビナーを実施しました。このセミナーの概要をレポートします。

第1部では、Attuned行動科学者のブランドンから、基調講演としてナッジに関する基礎的な情報の提供をし、慶応大学招聘教授の小杉俊哉氏より内発的動機とナッジを使ったリーダーシップに関する理解、Attuned飯田より内発的動機のナッジへの具体的な活用提案、JT古川様より企業でのナッジプロジェクトの事例についてご紹介いただきました。

第2部のパネルディスカッションでは、ナッジの活用を中心として「社員が自律的かつ生産性の高い職場を実現するための鍵」を、ゲストの皆様とともに考えました。

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第1部 「ナッジ」の理解と活用事例

①ナッジとは?米英政府などでのナッジプロジェクトの最先端

ブランドン・ロウトマン(Attuned シニア行動科学者)

Attunedシニア行動学者のブランドンは、シカゴ大学で行動科学を学んだ後、イギリスのロンドンにあるThe Behavioural Insights Teamでナッジのサイエンティストとして働いた後、アメリカでいくつかのナッジのプロジェクトに参加しました。

ナッジを理解するには行動科学を知る必要がある

認知的バイアスの一覧を参照したい方はこちら

ナッジを理解するためには行動科学について理解する必要があります。行動科学は「人間がどのように意思決定を行っているか研究し、さらにどのように意思決定に影響を与えられるかを研究する分野」とここでは定義します。

ナッジの考え方・哲学の基礎

ナッジについての数ある本の中で最も影響力がある、リチャード・セイラーとカス・サンスタインという2人の学者が著した『Nudge』(邦題:『実践行動経済学』)はナッジの基礎となる2つの哲学を紹介しています。

1:人々は自分自身の決定を自由に行うべきであり、選択肢は制限されるべきではない

2:人々が前向きな決断をするように影響を与えるべき。(例:環境汚染を減らす、健康を増進する、あるいは老後のためにもっと貯蓄する、などを促すべき。

ナッジの活用事例

ナッジを活用した有名な例をご紹介します。

ナッジに触発された英国政府の政策立案者は、リチャード・セイラー氏の協力を得て、“Nudge”の構想を実現することを任務とするチームを作りました。しかしこのグループにはあらかじめその適用期限を決めておく条項が課されました。10倍の費用対効果など一定の目標を達成しない限り、2年後には閉鎖されることになっていたのです。しかしこのチームは、ナッジの手法を考え出したことであっさりと目標を達成しました。初期の成功の一つに、英国の市民に税金を払うよう促す手紙の様々なバージョンをテストするというものがありました。最もよい結果を出したのは、社会規範の概念を利用し「英国では10人中9人が期限内に税金を払っています」と指摘した手紙でした。その結果、英国政府は数百万ポンドの税収を取り戻すことに成功したのです。(Behavioural Insights Team, 2014)

ナッジが行動に影響を与える一般的な例をいくつかご紹介します。

例えば、ある種のコミュニケーションにおいてメッセージを理解しやすいよう単純化する、意図的に重要な部分を強調するなどはナッジかもしれません。また、ある人に特定の行動をとってもらうためにリマインダーを送ってその行動を促す場合、それはナッジです。

次に、より具体的な例を見てみましょう

例1:生徒により健康になってもらう

例えばあなたが学校の管理者で、生徒をより健康的な食事をするようナッジしたいとき、次の3つの選択肢があるとします。ナッジは次のうちどれでしょうか。

1:不健康な食べ物を禁止し、そういった選択肢を排除する

2:不健康な食べ物の価格を上げて買いにくくする

3:カフェテリアのデザインを変え、健康的な食べ物が最初に目につくようにする

1つ目の選択肢は、不健康な食べ物を禁止することは生徒の選択を制限することになりナッジ哲学の第一原則に反します。

2つ目の選択肢は、不健康な食べ物の価格を上げるというものですが、これは人々が意思決定を行う際の経済的インセンティブを変えることになり、ナッジの定義に当てまりません。

3つ目の選択肢を選んだ方は正解で、これは間違いなくナッジです。

カフェテリアのデザインを変更して学生が健康的な食べ物を最初に目につくようにすることは、学生の好きなものを選択肢を維持すると同時に学生の健康に良い影響を与えるというナッジの要件を満たしています。

例2:企業におけるナッジの活用

数年前、英国のある企業が労働者を退職金制度に自動的に登録するようになりました。ただし、これは同時に労働者が希望すれば 退職金制度から脱退できるものでした。以前は自動的に制度に加入させるのではなく従業員が希望すれば加入を決めることが出来ていたので、大きな変更といえます。

1つ目のケースでは脱退、2つ目のケースでは加入が同じ手間でできるのでどちらの制度でも加入率は同じはずだと思われるかもしれません。しかし制度を変更した後、退職金制度への参加率は61%から約83%に上昇しました。

ここからわかることは、初期設定は重要であるということです。人は往々にして自分が操作しているシステムの中で流れに身を任せてしまうものです。

例3:コロナウイルス拡散防止

2021年6月、明らかに世界中がCOVID-19について関心が高まっている中で行われた研究を紹介します。

ウイルスの蔓延は、人々が特定の安全行動(例:手を洗う、社会的距離を置く、マスクを着用するなど)を行えば抑制できます。そこで、このような自己安全のための行動を促すことを目的としたメッセージを2パターンテストしました。


一つ目の表現では、これらの安全な行動をとることの利点を説明する方法として 、個人にとっての利益を強調しました。つまり自分の安全を守れると強調しました。一方、別の表現では、安全な行動をとる利点として、地域の安全を守るためにできることがあるという公共の利益、つまり社会全体への利益を強調しました。


その結果、後者のほうが人々が安全な行動をとる意識を高めることがわかりました。つまり個人的な利益よりも公共の利益を強調する方が人々の安全な行動への意識を高める方向へナッジしたのです。

例4:仕事のパフォーマンス向上

最後に、職場のパフォーマンスを上げた例をご紹介します。

従業員は新しいスキルや知識を習得するよう、ナッジされることもあります。インドに本拠地を置き、カスタマーサポートとバックオフィスサービスを専門とするウィプロBPOでは、新入社員の入社時に紙の日誌を渡し、1日の終わりに15分かけて学んだことを書き留めるよう求め、これを10日間連続で実行しました。このように内省を促すことで、学ぶべき内容を網羅したテストで高得点を獲得するようナッジされた、という結果につながりました。(Di Stefano et al., 2014)

ナッジを企図する際のポイント

ナッジプロジェクトはいくつかの段階に分けられます。

第1段階:行動と結果を特定する、つまり影響を与えたい行動の種類ともたらしたい結果を具体的に特定する

第2段階:結果に関連する文脈上の要因を理解する

第3段階:文脈上の要因を心理学のアイデアと結びつけて特定のナッジを作成します。

これらを行った上で実験でナッジを検証し、特定した問題にナッジが効くか効かないかを確かめるのです。


ナッジの作成の際には、まず特定の行動をより簡単に実行できるようになるにはどうすればよいかという問いを設定します。またナッジしたい人の立場に立ってその人の視点から問題を理解したり、これまでに他に何が行われたかについて過去の関連する事例から学ぶことも必要です。


そしてナッジは時間をかけて取り入れ、根気よく実行していくことが重要です。1つのナッジを実行してうまくいったとしても行かなかったとしても、より効果的なナッジへの改善を試みる必要があります。

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②内発的動機で人を動かすリーダーシップをとることとナッジの関係性

次に慶應義塾大学 小杉先生から、内発的動機で人を動かすリーダーシップをとることとナッジの関係性についてお話をいただきました。

そもそも人を動機付けさせることは不可能

まず確認しておきたいことは、人を動機づけさせることは出来ないということです。やる気はあくまで本人がそれを決めることがらです。そして人によってそのモチベーター、動機付け要因は異なるということも同じく重要で、抑えておきたいことです。

またゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた作家のダニエル・ピンクが言っているように、現在は『モチベーション3.0』の時代で、同じ働くにしても、いかに内発的動機に働きかけるかが鍵になっています。仕事自体をいかに楽しく目的にしてもらうか、好奇心を持って楽しくやってもらうか。そういう環境を経営者や上司は作っていく必要があります。

それからナッジに関しても同様に選択は本人の自主性に委ねられています。人間は行動を起こす時、それに対して動機を必要とします。動機は勝手には湧いて来ないのでトリガーが必要ですが、このトリガーとしてナッジを活用することができます。

ナッジ設定のTips

ナッジの設定は”EAST”であるべきとよくいわれます。まずは簡単にできるEasyです。それからAttractive、魅力的なもの。そしてSocial、社会的なものです。仲間からのプレッシャーを受けたり,人の真似をしたりするという人の特性をうまくナッジに応用します。あとはTimely、ナッジの効果を発揮するタイミングです。こういったことがナッジの設定では重要になります。

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③内発的動機を使った「ナッジ」の具体的提案

飯田 蔵土(Attuned事業責任者/行動経済学会員)

Attuned事業責任者である飯田からは、具体的にナッジと内発的動機をどう結びつけるのか、それを企業においてはど適用できるのかということについてご提案を行いました。

内発的動機でナッジする

まず初めに「社員に資格を取ってもらいたい」という場面を考えてみてください。これに対して社員の感じ方は決して一様ではありません。資格を取ることや勉強することが好き、自分が何か成長することに対して非常にやりがいを感じるという方もいる反面、そういった成長につながるかどうかが自分のやりがいには繋がらないというような社員もいます。つまり人によって、内発的動機というのは様々にあるわけです。

そのなかで、例えばモチベーションの中心が利他性である社員の場合、どのようにナッジできるか考えてみましょう。

例えば、「この資格がある人がこの部署にいると我々としてはこの案件を取ることができる(部署のためにもなる)から、ぜひその資格を取ってほしい」と伝えると、人のために行動したい利他性に訴えかけ、「資格を取る」という行動をナッジできる可能性があります。


要するに、資格を取るという全く同じアクションに対しても、人に合わせて目的を見つけていく必要があるということになります。内発的動機を活用するというのは非常に強力で有意義だと感じられるかもしれませんが、一方企業でやりがいといったようなことを活用している例は多くありません。うまく内発的動機を活用するためには適切なナッジが必要不可欠なのです。

しかし、ここには二つ大きな課題があります。まず内発的動機というのは人によって全く違う千差万別なものであるということ、もうひとつはやりがいは他人からは非常にわかりづらいということです。さらにいえば他人から見えづらいだけでなく、自分自身でもうまく言語化できていないというケースもあります。 

内発的動機と組織の傾向を可視化する

そのなかで我々は内発的動機に影響を与える要素を心理学の研究に基づいて、11個のモチベーターに分類しました。これはフランクフルト大学心理学科と共同でつくったフレームワークです。人のモチベーションに影響をあたえる要素を整理したうえで、さらにそれぞれがモチベーションに影響を与える要素がどのくらい強いのかということを数値化したものになっています。


また、これを一人一人に適用することによって組織の傾向も見えるようになります。つまり「こういったモチベーターというのがこの組織においては効きやすい/効きにくい」というようなことを可視化できます。下記の図で言えば、赤線(中央値)が右側に寄っているモチベーターほど、ナッジとして効きやすいと理解できます。

Attunedを使うことで、よりピンポイントに、どういった内発的動機をどういった行動に結び付けられるかがわかり、ナッジを設計できるようになると言えます。

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④JT様における「ナッジ・プロジェクト」ご紹介

古川 将寛 氏(日本たばこ産業株式会社 たばこ事業企画室)

実際に企業での「ナッジ」の導入に取り組まれている日本たばこ産業株式会社 古川将寛 氏からは、社内に実際に存在した組織課題とナッジを活用したプロジェクトをどのように展開しているのかについてお話をいただきました。

点の研修から線のEXデザインへの転換

企業内にはサイロ化や分断があり、その分断によって挑戦が生まれないような風土、文化ができてしまっていました。そういった風土があるとお客様のニーズを満たすことができず業績が下がっていき、さらに企業風土が悪化するという、負のスパイラルに陥っていました。

そこに対して何もしてしていなかったわけではなく、例えばマネージャーを集めた研修を中心に、経営層から自立・挑戦を促すメッセージ発信などを試みました。それらによって大企業病の打破また自立型人材の育成というところを目指しましたが、正直効果はあるのか担当者としても少し懐疑的でした。実際に現場からも、「研修だけで終わってしまっている」、「自立や挑戦という言葉が表層的になってしまっている」と聞くこともありました。

それらを踏まえて本当に組織を自立型の組織に持っていくために立てたたのが、3つのポイントを抑えた仮説です。

まず点ではなく線を提供するということ。研修だけで終わるのではなくて、実務とリンクをさせる、従業員エクスピリエンス(Employee Experience; EX)を徹底してデザインし、ナッジを行っていく必要があるのではないかということです。

そして「上から言われたから」などの理由ではなく、個々の社員の内発的動機に立脚させることが必要なのではないかということ。 これがまさに今日のテーマのナッジ論を活用している部分なのですが、これらを実現するために組織の心理的安全性というものを確保しながら組織開発のステップを描いています。

内発的動機に立脚させるというところですが、まず個人のWillを明らかにした上で実際にDoをしてもらう、挑戦する社員となってもらうことが必要です。挑戦する社員となるといっても、大きな会社では独りで形にしていくことが難しいので、同じようなWill、志を持った人と繋がってコミュニティを形成し、仲間とともに行動することを促す仕組みも実践しています。

そういったフローをサイクルとして継続することで、挑戦する社員が生まれ続ける、自律的な組織風土が定着していくということを意図して様々な施策に取り組んでいます。

グループの中で相互理解を加速させるAttuned

そんな中、個人だけでなく、組織・グループに対してもツールを導入しています。

例えばグループワークは、初めて会って人達とグループ化するようなものなので、想定よりも円滑に進まなかったりします。

そういった心理的距離を補ってくれるのがこのAttunedです。Willが明確になったメンバー同士がモチベーションの可視化によって相互理解をし、互いにナッジすることで成長していくのではないかという仮説を持って導入しています。そして挑戦を続ける人が最終的に会社の中でマジョリティになっていくことを、この取組の先に描いています。

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第2部 パネルディスカッション 「ナッジを企業の現場で活用するには?」

モデレーターはAttuned飯田が務め、パネルディスカッションという形で、プレゼンテーションをしていただいた4人とニューヨークからブランドン、弊社の代表取締役であるケイシー、そしてここからはカインズCHRO西田雅之様にもご登壇いただき、議論を深めていきました。

日本企業で実際にナッジを活用するには

飯田:ブランドンに質問なのですが、日本企業で実際にナッジを活用していくことはできると思いますか?


ブランドン:できると思います。先ほどもお伝えしましたが、例えば企業においては社員に対する一番最初の仕組み・初期設定というのを変えることは非常にパワフルなアプローチになると思います。

飯田:日本企業におけるナッジの適用の難しさについてもお話を伺いたいと思います。小杉先生はそれに関して感じることはございますか。

小杉:例えば「コーチング」の研修をうまく活用できる人とできない人に分かれます。それは研修は研修で終わってしまっていて、日常の業務ではこれまで通り(コーチングでなく)「管理」してしまう現状があるからだと思います。「管理」の場合、リモートで見えなくなると不安になるわけですね。元々部下に対して、自立、本人主導でやらせている管理職はリモートワークになって効率を上げることが出来ますが、それが出来ない人との差が大きくついています。ナッジを適用する際には人によって付いているこの差をいかに埋めながら進めるかということが課題になってくるのかなと思います。

ナッジを運用する際の難しさ

飯田:ナッジのようなアプローチも上手く使える人とそうでない人もいるという話だったのですが、実際古川さんいかがでしょうか。

古川:実際にナッジを企業で活用する難しさとしては、社員のWillや動機を求めると、こちらが想定している以上のものを出してきてくれることがあるのですが、そういった時にWillを受け止めることができない、受け止める度量がないところが問題だと思っています。

飯田:日本とアメリカの文化のどちらにも詳しいケイシーから、ナッジの適用の難しさについて思うところはありますか?

ケイシー:今私が自分たちの会社でやりたいナッジがあるんです。このリモートワークの時代では、社内ミーティングで本当の自分の部屋を見せると関係性が早く深まると思っています。海外のお客様と話していても、大体みんなバーチャルの背景は使わず、そのまま自分の部屋です。それがあるともっと営業の話がうまくいくんじゃないかと思うのですが、うちの会社の営業やカスタマーサクセスにそれを伝えると「すごく嫌だ」という人が出てくるんですね。文化の違いもあって難しい部分は確かにあるなと思います。

ナッジが会社にいいように使われないために

飯田:「ナッジが悪用というか、会社のいいように使われないのではないかという恐れはないでしょうか」という質問をいただきましたが、この点について少しブランドンにお話しを聞いてみましょう。

ブランドン:ナッジにはやはり悪用されないためのルールづくりをきちんと行っていく必要があるとは思います。細かい手順やプロセスはきちんと作っていくことが重要でしょう。また社員たちが「この企業でこのナッジはちょっとおかしいんじゃないか」と声を上げることができる、心理的安全性のある環境を作るということも重要だと思っています。

飯田:この部分についてケイシーはどう考えていますか。

ケイシー:大きいナッジは企業の中でやる際、透明性が非常に大事だと思っています。そのナッジに取り組もうと思った背景であるとか、具体的に社員と会社にとってのベネフィットがナッジによって何になるかとか。

飯田:小杉先生はこれついてどのようにお考えでしょうか。


小杉:ナッジを絶えずセルフチェックをすることも重要ですが、他からもチェックできるようなことが健全性につながるのではないかと思っています。

社員から選ばれる企業をつくるために

飯田:もう少し経営陣の観点から西田様に質問させていただきます。従来はトップダウン的なアプローチが多かったと思うのですが、社員の意識とのギャップ、Willのギャップといった部分ついてどのようにお考えでしょうか。

西田:経営から意識を変えないといけないと思います。採用の分野でも今は企業が選ぶ時代から選ばれる時代になってきているんですね。そのため、選ばれる企業になる方法を真剣に考えなければなりません。「この会社に入ったら自己実現が出来るのか」を一つの基準として会社が選ばれていると思います。そのため個人の目標と会社の目標のベクトルをどう合わせるかということが、重要な問いだと思います。人材の流動化の中、ベクトルが同じ人同士が一緒に働くことが理想だと思うので、そういった世の中、ナッジを有効活用していく会社運営に変わっていくのではないかと思っています。

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まとめ

ケイシー:面白い話ばかりで、私自身も大変勉強になりました。すぐにいろいろ試してみたいですね。

日本の企業にはまだまだ色々な問題がありますし、モチベーションもリーダーシップも日々進化を続けています。その中で、ナッジはひとつの解決策になれると思います。ナッジを作る際には今日お伝えしたポイントを思い出してもらえたら幸いです。

人の行動を変えるのは非常に難しいことだと思いますが、うまく使えば日本の企業にはもっと明るい未来があると信じています。


関連リンク

行動科学と内発的動機で自律型組織を実現する Bizzine

参考

Behavioural Insights Team. (2014). EAST. Four Simple Ways to Apply Behavioural Insights .

Di Stefano, G., Gino, F., Pisano, G., & Staats, B. (2014). "Learning by thinking: How reflection aids performance" Harvard Business School NOM Unit Working Paper, 14- 093.

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日本版ナッジユニットBESTについて

2023年1月12日更新

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