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『チームが機能するということはどういうことか』〜”心理的安全性”についての理解

レビュー

『チームが機能するということはどういうことか』(エイミー・C・エドモンドソン 英治出版 2014)は、現代の情報社会において、組織がどのように学習し、イノベーションを起こし、そして競争していくのかについて、ハーバードビジネススクールの教授が豊富な具体例とともに示した一冊。

本書では「チーミング」という概念が紹介されている。

非常に速いペースで競争環境が変化していく現代の企業においては、固定的な役割、固定的な集まりである「チーム」では、対処できない。

動的に、柔軟に協働、学習をし、活動していく状態、「チーミング」が必要となる。チーミングとは、集団としての活動状態を表す新しい概念だ。

本書(原書Teaming)が出版されたのは、2012年。しかし、その時代ですらそれ以前の10年とはまるで違う勢いで社会は変化をしていた。「もう固定的なチームでは対処できない」という危機感を著者は持っていたのだ。

果たして、それからの社会はどれほどの大きな変化が起きただろうか。そして、これからの10年はさらにその流れは加速していくに違いない。

もはや、従来の伝統的な組織のあり方で対応することは、不可能だ。

今、30年前のインフラ、黒電話、FAX、電卓、手書きの台帳、、、で、情報社会のビジネスを戦おうとする経営者はいないだろう。

固定的な組織としての「チーム」は、黒電話、FAX、電卓、手書きの台帳に並ぶ前時代の遺物。もはや戦う武器にはなりえないのだ。黒電話がスマホにアップデートされているように、「チーム」も「チーミング」にアップデートしなければならない。本書を読めば、それがわかる。

現代の社会で、チーミングに携わるすべてのビジネスパーソンは、本書を手に取ってみるべきだ。必ず、自身の働き方についての発見があるはずだから。

著者について

エドモンドソン,エイミー・C.

ハーバード・ビジネススクール教授。リーダーシップと経営論を担当。1996年からMBAやエグゼクティブ教育プログラムで、リーダーシップや組織学習や業務管理について教鞭をとり、世界のさまざまな組織へのコンサルティングも行っている。組織学習とリーダーシップに関する論文は、60を超える学術誌や経営誌で取り上げられ、全米経営学会の組織行動部門では、最優秀論文賞(2000年)、カミングス賞(2003年)が贈られた。アニタ・タッカーとの共同論文は、経営実務に多大な貢献をしたことでアクセンチュア賞を受賞(2004年)。経営思想家ランキング「Thinkers50」では、2011年と2013年に二期連続で選ばれた

How to turn a group of strangers into a team | Amy Edmondson

競争に勝ち生き残るのは、◯◯な企業

attunedの飯田蔵土です。外資系グローバル企業でエンジニアから、事業部長、本部長といった管理職まで経験しています。

今日は、私が最近読んだ『チームが機能するということはどういうことか』の概要を皆さんに共有したいと思います。

いや、ほんとその通りですよね。この本の言ってること。って思いました。

原書が書かれた時期をみてみると、2012年。

記憶とたどってみると、、、嘘です、ググってみると、2012年って、まだ、LINEが登場して数か月、当然、Tiktok存在していない時代なんです。

InstagramやUberはまだサービスが始まったばかりで、Paypayだってなかったし、AmazonEchoも存在していなかったんですよ。子供たちはプレステ3で遊んでいました。Swichがまだなかったから。

ビジネスツールとしても、Google appsとかはほとんど普及していなかったし、Miroもなかったし、Teamsも、Slackもなかった。Pipedriveだってなかったんです。どうやって仕事してたんですかね、私たち。

世間はサブスクリプションやSaaSってなんだ?という感じだったと記憶しています。

とんでもない変化が起きていますよね。

しかも、これからの時代、もっと変化が起きる。間違いなくもっと変化する。競争に勝ち、生き残っていくのは、変化を止めようとする企業ではなく、変化についていこうとする企業でもなく、自ら変化を起こしていく企業という時代です。

固定的なチームで、10年前、いや30年前、50年前と同じやり方、つまり上司が指示を出して、部下たちがそれにしたがって動いていくというやり方ではとても太刀打ちできません。

なぜか。

時代の変化や複雑性は、あっというまに上司の「知っていること」「経験したこと」を追い越してしまうからです。誰だって自分が知らないことは、指示できません。

チームのメンバーの力を最大化出来る上司を求められる時代

「全てを把握する上司」「スーパープレイヤーの延長」が「理想の上司」だった時代は、もはやとっくに終わっているのです。

メンバー全員が、組織として学び、お互いに協調しながら有機的に活動していくしかない時代なのです。「理想の上司」も「スーパープレイヤー」から、「チームのメンバーの力を最大化出来る人材」に変わっているのです。

じゃあ、どうすればいいのか。

細かい話は、本書を読んでいただくと分かりますので、ここでは私が元・管理職として特に興味をひかれたところをごく簡単にご紹介しましょう。

それは、心理的安全性と「チーミング」に触れているところです。

「心理的安全性」って、よく耳にしますよね。概念としてはかなり以前から提唱されていたようですが、よく耳にするようになったのは「グーグルによる、自社のプロジェクトチームの生産性に関する大規模な調査」からじゃないでしょうか。

詳細は、これまたググっていただくとして、大雑把に言えば、グーグル社員20万人(結構いますよね)の生産性を調査したところ、生産性の高い組織(プロジェクト)は、能力が高いチームでも、規律が強いチームでも、放任されているチームでもなく、「心理的安全性」が担保されているチームだったというお話です。

これ、結構びっくりしますよね。「心理的安全性ってなに?!」ってなるじゃないですか。

で、「心理的安全性」を日も解くのもググっていただくとして、これも簡単に私的にまとめると「安心して言える」「安心して聞ける」ってことなんです。

心理的安全性は、「言える化」「聞ける化」から

「こんなこと聞いたら、アホ扱いされるんじゃないか」(無知だと思われる不安)

「これ、みんな分かってるの?分かったフリしよう」(無能だと思われる不安)

「ここで課題を指摘したら、変革反対勢力だって誤解をされるんじゃないか」(ネガティブだと思われる不安)

「今さら、これ言ったら、半日の議論が無駄になっちゃうかも」(邪魔をする人だと思われる不安)

たぶん、みなさん経験ありますよね。

本書ではNASAにおける衝撃的な事例が紹介されています。

スペースシャトル・コロンビア号事故をご記憶でしょうか。2003年の帰還時、大気圏突入後に爆発事後が起き、乗員7名全員が命を落としたのです。このときの原因は、打ち上げ時にはく離した断熱材でした。

断熱材がはく離したとき、一人のエンジニアはそれに気がついていたのです。気がつき、深刻な懸念として上司にそれを伝えたものの、上司が真剣に取り合わなかったため、それ以上騒ぎ立てることはしませんでした。もし、このときこのエンジニアが、更に上位の管理者にもっと声を挙げられていれば、それからわずか8日後の悲劇は防げたかもしれません。

そのエンジニアは「自分よりはるかに地位の高い人に意見を具申するなどもってのほかだと言われていた」と語っています。

心理的安全性が存在しないことは、これほどまでに悲惨な事故を起こし得ます。また、もっと身近なところでも、日々の生産性を奪っています。

「チーミング」の世界においては、こんなのは全く無用どころか、害悪でしかないのは明らかです。

だからこそ、「心理的安全性」こそが、上司の重要な役割となるわけです。そして、実際、様々な研究が「心理的安全性」の実現において「上司の果たす役割の大きさ」を示唆することも本書で紹介されています。

「理想の上司」のスキルとは?

現代の「理想の上司」とは、「心理的安全性を確保する上司」と言っても差し支えないかもしれません。

本書によると、心理的安全性が確保されることにより「チーミング」にもたらされるメリットは7つあるそうです。

  1. 率直に話すことが推奨される

  2. 考えが明晰になる

  3. 意義ある対立が後押しされる

  4. 失敗が緩和される

  5. イノベーションが促される

  6. 成功という目標を追求する上での障がいが取り除かれる

  7. 責任が向上する

しかし「心理的安全性が確保された状態」とはどんな状態でしょうか。

本書では、それは

「メンバーが仲良くなるような居心地の良い状況を意味するものではない」

「プレッシャーや問題がないことを示唆するものでもない」

「結束力がなければならないということでもない」

「意見が一致しなければならないということでもない」

と明確に述べられています。

むしろ「チームの結束性は、異論を唱えることに対する積極性を弱めてしまう『集団思考』にすら陥る可能性がある」とすら指摘しています。

では、「心理的安全性」を作るために上司がやるべきことはなにか。それにも、本書が答えてくれています。

「心理的安全性をつくるためのリーダーの行動」

  • 直接話の出来る親しみやすい人になる

  • 自分自身が現在持っている知識の限界を認める

  • 自分もよく間違うことを積極的に示す

  • 参加を促す

  • 失敗は学習する機会であることを強調する

  • 具体的な言葉を使う

  • 境界(筆者注:明確な目標・ゴール)を設ける

  • 境界を超えたことに対する責任を負わせる(筆者注:明確な目標・ゴールに対する結果に対して一貫性があり、公平な扱いをする)

ぜひ、みなさんの組織管理のご参考にしていただければと思います。

まとめ

最後に、今回の記事のまとめをしておきましょう!ここまで、お読みいただきありがとうございました。

  • 変化の時代。組織に求められるのは「チーム」から「チーミング」へ変わった

  • 「心理学的安全性」は「チーミング」に欠かせない

  • 現代における「理想の上司」とは「心理学的安全」を生み出せる上司


飯田蔵土 Attuned セールス シニアマネージャ

新卒でHPにSEとして入社し、その後米国本社経営企画部門へ異動。複数の大手外資系企業にて戦略コンサル、事業部長、オペレーションズ本部本部長などを務め、AIベンチャーへの参画を経て現職。FAX注文書の入力から、多国籍企業間のM&A、営業、FP&Aまでカバーする。一橋大学大学院修了(MBA in Finance)



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