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心理的安全性と内発的動機を高めるために、今日からできること

Attunedの心理学者であるメリッサ・タラントラ博士による、 最新のホワイトペーパー「心理的安全性を高める“アフターコロナ”の職場づくり」を公開いたしました。
企業が心理的安全性と内発的動機づけを職場文化に組み込む方法を、 最新の学術論文を中心に調査し、 今日から始められるシンプルで効果的な戦略を紹介しています。

ホワイトペーパーは、こちらから無料でダウンロードしていただけます。
本ブログでは、3回に渡りホワイトペーパーの内容をご紹介しています。



これまでのブログで、心理的安全性と内発的動機づけの存在が新しい職場づくり、そして技術の導入に貢献することをご紹介してきました。
それでは、どのようにして心理的安全性と内発的動機づけを高めていけばよいのでしょうか。
より具体的には、従業員がやる気を感じ、生き生きと働くために何が必要かを理解し、選択と自己決定の感覚を植え付け、新しい仕事の世界や技術学習がどのように進んでいるかについて、従業員が安心してフィードバックできるようにするには、どうすればよいでしょうか?

ハイブリッドワークで心理的安全性を向上させる戦略


ハイブリッドワークにおける心理的安全性を向上させるための戦略は、すでに広く議論され、評価されています
(例えば、Dilan, 2021; Edmondson,2019; Menabney, 2021; Newman, et al., 2017; O'Donovan & McAuliffe, 2020)。

そこでよく言及されるヒントのうち、いくつかをご紹介します。

・説得力のある根拠を示すことで、心理的安全性の重要性を伝える。
・新たに制定したワークガイドラインを明確に示し、社員が効果的に使い、従うことができるようにする。
・チームメンバーへの感謝の気持ちを定期的かつ明確に伝える。またあなたが彼らの貢献を認め、感謝していることも伝える。
・対面式の交流に加えて、非公式の交流を行うことで、社員が帰属感やつながりを感じられるようにする。
・社員に懸念を表明する場を与え、それらの懸念事項を深く完全に理解しようと努めること。そうすることで、社員はあなたの方針が現実の仕事に基づいていると感じることができる。これはオープンエンドの質問をし、また明確な情報に基づいて理解を深めるまで、たとえ自分の仮定が唯一の解決策であると感じていたとしても、質問を止めないこと。例えば一般に昇進は良いことだと思われているが、少数の人にとっては新しいレベルの責任に不安を感じたり、チームメンバーの退職に悲しみを感じたりするかもしれない。

アセスメント活用のメリット

心理的安全性を向上させるための戦略において優位な地位を獲得しているもう一つのツールは、匿名の標準化されたアセスメントです(Edmondson, 2019)。 この議論の文脈でこれは、電子的に管理され匿名で採点され、チームの心理的安全性のレベルを定量化するために使用できる検証された尺度のことを意味しています。この種の評価には、いくつかのメリットがあります。

・社員が上司やチームメンバーに匿名で安全にフィードバックを提供するという行為自体が、心理的安全性の感情に貢献し、フィードバックを提供するというDPB への社員の関与を直接的に促進する。
・社員の経験を理解することを目的としたアセスメントに投資することは、経営陣が社員の幸福を気にかけ、彼らの視点を理解したいと考えていることを伝えることになり、その結果、3 つの本能的な心理的欲求(自律性、有能性、関係性)が満たされ、内発的動機の向上につながる。
・アセスメントが標準化されていることで、構造的な変化に対する社員の反応を追跡し、変化の成功を長期的に評価することができる。これは会社全体にメリットがある。
・チーム間の客観的な比較を可能にすることで、どのチームが最も介入を必要としているのか、どのマネージャーがチームメンバーのニーズをサポートするのに苦労しているのかを判断することができ、マネジメントアプローチをより的確にするための新たな方法を提供することができる。
・デジタルでの管理は、社員の大部分が都市から離れた場所、あるいは地球の反対側にいるようなハイブリッドな職場環境での評価プロセスを大幅に容易にする。

内発的動機づけを高める共通の戦略

では DPB の内発的動機づけを高めるとは具体的にどのようなことでしょうか。それは、社員が自発的に DPB をやりたいと思うような方法を考えなければならないということです。行動自体が面白い、楽しい、必要性を満たす、あるいは社員の個人的な価値観に合致 している必要があります。抽象的に聞こえるかもしれませんが、幸いなことに、何十年にもわたる研究により、社員の内発的動機づけを高めるために、雇用者が利用できる実用的なヒントが生み出されつつあります。

心理的安全性を高めるための具体的なアイデア

そもそも心理的安全性をサポートするための上記の提案を取り上げた理由は、内発的動機づけの研究者である身として、私自身の経験から考えがあったからです。
本質的なモチベーションをサポートするための戦略は、心理的安全性を促進するための上記の提案に強く反映されています。 実際に心理的安全性を高めるようにデザインされた意図的な介入は、3 つの本能的な心理的欲求(自律性、有能性、関係性)を満たし、その結果内発的動機づけをもたらすという研究があります(Mattjik & Sanders, 2020)。

具体的には、
・可能な限り選択肢を提供する
・支配的な言葉の使用を最小限に抑える
・社員の迷いや懸念を理解しようとし、それを認める
・決定や制限に意味のある根拠を与える社員との信頼関係を築く
・社員の知性や能力を結果に結びつけない(例:「このプロジェクトでうまく やれば、あなたの頭の良さがわかるでしょう」など) などです。

支援型リーダーシップスタイルと3つの心理的欲求の関係性

Attuned は 11 種類の内発的動機を特定しましたが、モチベーターを知ることは、その社員を最も効果的にサポートする方法を理解するための非常に良い手がかりとなります。 内発的動機の理解によって、相手が仕事のどの側面を最も楽しく、面白く、また自分の価値観が一致していると感じているのかをマネージャーが理解することができるからです。

この理解をもとに、マネージャーは各個人にとって最もモチベーションの高い仕事の側面をどこかを考え、またそれを最大限に活用することができます。例えばある従業員が「成長」を最大のモチベーションの 1 つとしている場合、その社員に新しいスキルを学び、挑戦的で複雑な仕事に従事する機会を提供することで、内発的動機を更に活かすために必要な能力的満足感を与えることができます。DPB の内発的動機づけをサポートするためのエビデンスに基づく方法は、支援型リーダーシップに関する文献から得ることができます。

支援型リーダーシップとは、改善のための社員のアイデアを積極的に奨励し、変更やアイデアを実行するための裁量権を社員に与えることです。このようなリーダーシップスタイルは、DPB に対する内発的動機を高めることが研究で示されています(Ju, et al.2019)。また一般的に内発的動機づけを高めることができることも示されています。 具体的には、意思決定に参加することで、社員は自分が作り上げた職場環境を選択し、コントロールしているという感覚を持つことができます(自律性の充足)。また、自分が関与することで、自分の意見が求められるだけの能力と知識があるとみなされたという感覚を持つ(有能性の充足)だ けでなく、マネージャーとの親密な関係の中で、彼らの名前でそのような大きな仕事に対する意思決定を行うことができれば、自分は会社の大切な一員であると感じることができる(関係性の充足)のです。

心理的安全性と内発的モチベーションを支えるエクササイズ

臨床心理士として、クライアントが人生を大きく変えるような変化を起こす手助けを行いながら何年も過ごした私の、ある重要な教訓があります。 私は利用可能な最善の治療法のすべてのステップを覚えていました。うつ病や不安症などがもたらす生物学的、認知的、感情的な環境についての専門知識もありました。しかしもし私がクライアントがどのように私たちの仕事を経験したのかを理解することを怠り、私が指示したことがクライア ントごとに異なるユニークな人生の状況に適合していることを確認していなかったら、間違いなく失敗していたでしょう。

これは CEO や経営者にも言えることです。人が関わる仕事では、紙の上だけでなく、現実の世界で何が有効なのかを知らなければなりません。 そして、現実に何が機能するかを理解することは、関係する人々を深く理解することでもあります。 したがって大規模な構造改革を伴うプロセスの最初のステップでは、会社が社員に求めていることについて、社員の経験を共感を持って検証する必要があります。

社員が再構築のプロセスに参加するメリット

結局のところ、最も影響を受けるのは社員であり、変化を実行するのも社員です。そして企業がその変化を成功させるために頼り にしているのもまた社員なのです。雇用者が共感できる知識を持って変化のプロセスに入ることには、いくつかのメリットがあります。
第一に、新しい仕事の仕組みの中に、社員のウェルビーイングを損なわれないようにするための機能を、事後的ではなく事前に機能を組み込むことができます。
第二に、リーダーが従業員と接する際に、より良い質問をしたり、より深い意味を持つキーフレーズを探したりすることで、リスニングスキルやアセスメントスキルを向上させることができます。
第三に、これは社会的責任を果たすために必要なことですが、変化が自分にどのような影響を与えているかを説明する責任をすべて社員に負わせるのではなく、マネジャーや CEO 自身が時間を割いて積極的に彼らの経験を理解しようと努めるべきなのです。 他人を気遣うことは、あなたをより良い人間にするだけでなく、関係性の満足度と幸福感を例え少しであったとしても確実に、高めることができるのです。
そして最後は社員の経験を共感的に理解することで、心理的安全性(Edmondson, 2019)や内発的動機づけ(Ryan & Deci, 2017 など)の出現をさせる舞台を整えることも出来ます。

共感エクササイズの実践

では共感エクササイズとはどのようなものでしょうか?それはシンプルなもので、社員の立場に立って考える時間を設けることです。1 時間ほど時間を作り、ドアを閉めてテキストエディタを開き、このプロセスで社員が経験しうる苦悩や感情をリストアップしてみてください。

まず、自分や自分の大切な人が社員になったと想像してみてください。 月曜日の朝一番に、雇用主からこのように言われたらどう感じるでしょうか?もし、自分の子どもが電話で「雇用主にこう言われた」と言ってきたら、どう感じるでしょうか?もし、私の父が 20 年も仕事をした後にこのように言われたら、どのように反応するでしょうか? 相手の感情を思い浮かべるのが難しければ「プルチックの感情の輪(emotion wheel)」(左図)を参照し連想してみてください。

このツールを使えばこの業務改革のプロセスに対して、社員がどのような反応を示すか を考え、共感エクササイズの出発点とすることができます。



新しい環境におけるストレスを想定する

社員が新しいスキル、テクノロジー、スケジュールを習得し、それを達成するための環境がますます複雑になっていくことを考えると、企業は次のようなことを想定しなければ なりません。
社員はすべての新しいテクノロジーに圧倒され、エネルギーを消耗してしま うかもしれませんし、答えが必要な問いをたくさん抱え、リモートで仕事をしている場合 は、その答えを得ることがより困難になるかもしれません。またミスをしたり、個人やチー ムの目標を達成できなかったりすることへの懸念も高まります。新しいテクノロジーや仕事の仕組みが効果的でなくなり、以前のレベルの生産性を維持することが困難になるのではないかと心配する社員もいるでしょうし、技術に精通した後輩や経験の浅い社員に地位を奪われること も恐れるかもしれません。
不確実性や実験性が高いため、実験や調整を繰り返すことで社員が疲弊してしまう可能性は大いにあります。なぜ特定の戦略が試みられているのか、根拠や証拠がないことに 苛立ちを覚える人もいます。社員以外の情報源から得られる証拠がないにもかかわらず、マネージャーが社員の視点を考慮に入れない場合、憤りを感じたり、リーダーシップに 対する信頼を失ったりしがちです。
逆に社員は上司やマネージャーに役職に逆らったフィードバックをすることに不安を感じたり、物事の進捗状況について何度も質問されることに疲れたりするかもしれません。ま た契約上(つまり有給)の仕事の一部ではないフィードバックのプロセスに時間と労力を費やさなければならないことに煩わしさを感じる可能性も低くはありません。 経営陣が彼らを意思決定に参加させなかったことから、変更に関する最新情報を提供するメールの一見無害な言葉の選択に至るまで、社員は利用されている、忘れられてい る、そしてそれが当然だと感じてしまうことがあります。


最後に、上記のストレス要因はすべて、パンデミックという特殊な状況下で起こっていることを認識することが重要です。社員はすでに何ヶ月にもわたって、変化、不確実性、恐怖、悲しみ、自律性の喪失にさらされています。これは社員のモチベーションと感情のリソースがすでに枯渇し、仕事の再構築やテクノロジーの導入による変化に対処するためのリソースが少なくなっている可能性を意味します。
またストレスの程度については、社員によって違いがあることを認識することも必要もあります。

これらの状況を十分に鑑みたうえで、自社に、そして目の前の社員に最適な職場環境の構築を行うことが大切です。

これらの内容をより詳しくご覧になりたい方は、こちらからホワイトペーパーを無料ダウンロードして全文をご覧ください!
ホワイトペーパー:心理的安全性を高める “アフターコロナ”の職場づくり

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Melissa Tarantola PH.D

心理学(博士)。
現在Attuned R&Dチームに所属。ミズーリ州立大学コロンビア校にて医療心理学のPH.Dを取得後、複数のベンチャー企業で心理的アプローチによるモチベーション、アディクション研究に取り組んでいる。米国心理学会員。
東京インターナショナルスクールで英語を学んだ経験もある。