【セミナーレポート】目的を達成する 1on1ミーティング入門

7月25日(火)の公開キックオフセミナーでは大きな反響を頂き、講師にはたくさんの1on1に関するお悩みが寄せられました。

そこで、Attunedではこの悩みに応えていくべく、セミナーの続編を開催。
8月31日(火)には「目的を達成する、1on1ミーティングとは?」を掲げ、引き続き堀井耕策さんよりお話をいただきました。


【講師】

堀井 耕策
1on1 エバンジェリスト | Attuned エバンジェリスト

年齢: 44歳
出身: 横浜市(現横浜在住)
職業: 1on1エバンジェリスト/研修講師

日本NCR株式会社にて、ITソリューション営業(POSシステム)に携わった後、ヤフー株式会社(以下、ヤフーと表記)にて営業企画・事業企画、人事(人材育成、組織活性、社内研修講師等)、グループ会社人事責任者(出向)を経験。2021年7月、独立。
2020年からは成城大学での講師も務めている。

https://note.com/1on1comm/


【目次】

  • 1on1ミーティングにおける目的の重要性

  • ヤフーにおける1on1ミーティングとは何だったのか

    • スマートフォンでの登場で迫られた方針転換

    • 個の才能と情熱を解き放つための1on1ミーティング

    • 社員の自らの力で成長するような組織をつくるために

    • 自分で選び、振り返ることで成長していく

  • なぜヤフーは1on1ミーティングを続けることができたのか?

    • 部下だけでなく上司も振り返る時間として

    • 浸透を実感したあるクレーム

  • 効果的な1on1ミーティングを作るために必要な3つのTips

    • 目的が相互に理解されている状態

    • 心構えが相互に理解されている状態

    • 対話のスキルが双方よい状態

1on1ミーティングにおける目的の重要性

 
 


皆さんやはり1on1ミーティングを実施する以上、気づきがある、次の行動につながるという時間にしたいと思われていると思うのですが、その目的は果たして部下の方にも適切に共有されているでしょうか?

研修などで多く頂くお悩みとして、部下から「特に話したいことがない」と言われてしまうというものがあります。

こう言われてしまう原因として2つ考えられます。

1つ目は関係性ができていないということにあります。

そして2つ目には、目的が共有されていないことが挙げられます。今、「なぜこの1on1ミーティングをわざわざ業務時間中に時間を割いてやるのか」を、双方で理解しないままにのぞむと得られる効果は半減します。

私もかなり1on1の回数をこなしてきましたが、目的を理解している人とそうでない人では“意味”の感じ方も全く違うものになります。
上司の皆さん向けの1on1研修というのはよくありますが、「部下の成長のための時間」に、上司だけが頑張ればいいというものではありませんよね。

やはりより効果的な1on1ミーティングを作るためには双方の努力が必要不可欠です。

今回はその1on1ミーティングの目的の重要性、そしてそれを上司部下双方が理解した1on1ミーティングを行うためのTipsについてお伝え出来ればと思います。


ヤフーにおける1on1ミーティングとは何だったのか

【出典】

 ・爆速経営 新生ヤフーの500日

 ・ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーション技法

 ・1on1ミーティング 対話の質が組織の強さを決める

スマートフォンでの登場で迫られた方針転換

今回は私が在籍していたヤフーが1on1ミーティングを導入した目的について、ヤフーの1on1ミーティングに関する本から抜粋する形でお伝えできればと思います。

ヤフーにおける1on1ミーティングは、簡単に言えばスマートフォンの登場による時代の変化に対応するための、人材育成の肝でした。

2008年にAppleからiPhoneが発売され、ヤフーもiPhoneに対応するという形を取っていましたが、それでもまだ積極的にiPhoneに投資をするといった状況ではありませんでした。というのもやはりPCがまだまだ優勢だったために、当分は取って代わられるようなことはないだろうと思っていたんですね。

しかしあれよあれよという間にスマートフォンは一人一台のレベルまで普及し、インターネットはスマートフォンを介してアクセスするというのが当たり前という時代になりました。

そしてこのことによって、ヤフーのトップページが見られなくなる、つまり広告媒体としての価値が下がって利益が減っていくという状態になり、いよいよ会社全体としてスマートフォンにシフトする必要が出てきたのですが、当時誰もそのビジネスモデルに取り組んだことはありませんでした。

そこでヤフーは経営の刷新を決断します。

個の才能と情熱を解き放つための1on1ミーティング

当時の経営層が「脱皮しない蛇は死ぬ!皆で成長していこう。そしてスマホ大陸へ挑戦していこう」というメッセージを強く打ち出していたのを覚えています。

私は当時社内のリーダー職としてこの言葉を聞いていました。

 
 

しかしキーワードだけでは人は成長しません。

その具体的施策として、「個の才能と情熱を解き放つこと」を目的に、人事施策として1on1ミーティングが選ばれたのです。

ひとりひとりの才能、熱量を最大限解き放とう、そうすれば当時スマホ対応が課題だったYahooにとって、経営陣が目指している“スマホ大陸”への挑戦に近づけるのではないか。このような狙いで始まったのがヤフーの1on1ミーティングだったということになります。

 
 


社員の自らの力で成長するような組織をつくるために

キャリア開発というものは多くの場合、会社から社員に成長する機会を与えるというものがほとんどだと思うのですが、ヤフーの場合は少し違いました。

 
 

本にも書かれているように、当時の人事のトップは、「会社によって成長させられるのではなく、社員自らの力で成長していくときに、自らの意思で成長していく組織に変わるのではないか。会社はそれを支援する組織であるべきではないか」とお話しされていたことを覚えています。

才能と情熱を解き放つということは、自分の強みとやりたいと思うことを重ねることでエネルギーを最大限に高めていくといったイメージを持っていただけるといいかと思います。

ひとりひとりがそういう状況になると、言わずもがな素晴らしいアウトプットが出てきますよね。

そしてそのために、会社は仕事をアサインするのではなく、社員が“チョイス”できるような環境を整えるべきであるという方向にシフトしていきます。

つまり才能と情熱を解き放つためにまずは色んな経験をしてみよう、色んな経験をすることで得意不得意が出てくるかもしれないが、そこからしっかり内省をしていこうということです。


自分で選び、振り返ることで成長していく

アサインするのではなく、チョイスするという考え方に変えていく。

私もチョイスを利用して人事に異動したのですが、この選択が人生の転機になったといっても過言ではありません。

自分で一生懸命考え抜いて選択する、自分の強みを使って、どういう風にすれば組織により貢献していけるのかを自分で考える機会を持つということが非常に重要です。これは会社全体にとっても非常に重要なポイントになっていました

そしてさらに経験するだけではもったいない、振り返る(内省する)ことで学びが最大化されていくということで、振り返りの機会の設置が試みられました。

内省というのは日々業務に追われていると後回しになりがちですが、こういった部分をしっかり行っていくことで、もっとスピーディーに成長し誰にもやったことがないことを皆でやっていけるのではないか、才能と情熱を解き放つ組織になれるのではないか。そうであるならば、しっかり内省しようという発想になります。

このような目的で、ヤフーは1on1ミーティングに積極的に取り組んでいくということになりました。

一週間に1回30分振り返りの時間を持つことによって振り返り(内省)の時間を持とう、それによって成長していこうというのが始まりだったんですね。

最近だと関係の質という話がありますが、ヤフーが始めた1on1の当初の目的は関係性というより、こういった経験と内省の質を最大化するという部分にありました。

なぜヤフーは1on1ミーティングを続けていけたのか?

 
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部下だけでなく上司も振り返る時間

今現在もヤフーでは1on1ミーティングが続いています。

続いている理由としては、まずは目的がしっかり共有されているという前提のうえで、部下にも上司にもそのメリットが共有できているからであると考えています。

もちろんそのために色んな施策をやりました。研修も本当にたくさんやりましたし、「1on1チェック」もやりました。

1on1チェックとは部下から見て上司の1on1ミーティングを評価するというもので、この中には

  • 目的達成のために上司は部下の支援をしてくれていますか

  • 振り返ることんで新たな気付きの場のになっていますか

    などの項目があり、部下は上司に対して5段階で評価をつけることができます。

上司からすると少し怖いものにはなりますが、これを見ることで上司も自分の1on1について振り返りができます。

これによって、組織全体として勢いよく先に進むことができたと思っています。


浸透を実感したあるクレーム

約3年という月日がたった時にヤフーの中で、あるメンバーから人事にひとつのクレームが入りました。

「私の上司が1on1ミーティングをしてくれない、どうにかしてください」と。

これを聞いたときに、ああ皆さん良い時間だと思ってくれたんだなあと思うと同時に、施策が浸透したひとつのポイントなのではないかと人事として感じていました。

こういう時間をぜひ皆さんの組織でも共有していただきたいと思っています。

 
 

効果的な1on1ミーティングを作るために必要な3つのTips

今日お伝えしたいのはこの3つになります。

 
 

目的が相互に理解されている状態

目的というのは組織によって違うと思います。

今日の話はあくまでヤフーの話(そして本に書いてある範囲の内容)なので、参考にしていただきながら、自社での目的、そしてどんな組織にしていきたいのかを改めて話し合っていただければと思います。

そのうえで、そのゴールが上司だけでなく部下の皆さんにも共有されていることが大切です。

心構えが相互に理解されている状態

目的だけではなく、どういう心構えでやっていけばいいのかという部分も重要です。

上司の皆さんに持っておいていただきたい心構えは、1on1ミーティングは部下の支援のための時間であるということになります。

進捗確認をしたくなってしまうかもしれませんが、それは別の場所でできると思いますのでぜひこの場は部下との気づきの共有・すり合わせなどのために使っていただければと思います。

また部下の方にも心構えは必要です。

上司がセッティングするからといって上司に甘えるだけの形になることがあっては意味がありません。

自分の成長のための時間であるということをしっかり理解したうえで、どのようにこの時間を使うかを考えてのぞむ必要があります。

対話のスキルが双方よい状態

最後にコミュニケーションスキルです。

質問力、傾聴力、承認の姿勢。こういったものを双方が磨くことで、一層効果的な1on1ミーティングになると思います。

こういったやり方をお試しいただき、よりよい時間を作っていただければ幸いです。

1on1に必要な実践力

 
 

私が長年1on1をやってみて重要だと感じたのは、相手を良く知るということになります。ヤフーも内省の次に来たのは関係の質でした。

相手を知るということはつまり自分を知るということですね。自分のモチベーション、そして相手のモチベーションのスイッチがどこにあるのか。こういったことを理解しておくと、話がスムーズに進みやすくなります。

皆さんも「この人苦手だな」といったことがあるかもしれませんが、実はそれは単にモチベーションが違っていたという場合が多いんですね。モチベーションのスイッチを理解できた途端に相手のやりたいことがよくわかり、関係性が改善するといった体験が実際に私にもあります。

そういった場面で、相手のモチベーションを可視化できるAttunedを使っていただくのもいいのではないかと思っております。短い時間で相手の価値観を理解できるAttunedのようなものがあれば移動直後の部下との関係性を築くのに時間をかけることなく、「成果を上げる1on1」に近づけますので、ぜひご利用ください。



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