私の家族を癒し、繋いだ Attuned
この1年は、世界中のあらゆる地域の人々にとって、困難で、悲劇的な1年でした。多くの人が愛する人や生活の糧を失い、数え切れないほどの人が家族の離散、生活の逆転、計画の喪失などを経験しました。
しかしパンデミックの影響は目に見えるものだけではありません。多くの人は、親しい人たちとの簡単な交流が地雷原のようになってしまった世界で、混乱し、孤立を感じています。
コロナウイルスのパンデミックに対する大切な人の反応にショックを受けたり、不満を感じたりした経験を持つ人も多いでしょう。
両親に「マスクをしてくれ」「旅行に行かないでくれ」と頼む。家族の誕生日や結婚式に出席するかどうかで配偶者と口論になる。親しい友人たちが裏庭でのパーティーをやっても大丈夫だと思っているのに、あなたがやらないとなると、気まずくなって言い訳を考えてしまう。
あるいはその逆で、人とのつながりを求め、耐えがたい孤独感に苛まれ、大切な人と特別な時間を共有できなければ、生きている感覚がないと考えている人もいるかもしれません。
欲求の矛盾
人間に「安全」「所属」「才能や能力を発揮して自己実現を図りたい」という欲求があることは、マズローの時代から知られていました。しかし、これらの欲求が突然対立してしまったらどうなるでしょうか。教えることが天職であるにもかかわらず、教室に入ると危険を感じる場合。一人暮らしをしていて、自粛ルールを破らないと大切な人に会えないとき。このような状況で、私たちは皆、同じような反応をするのでしょうか？
マズローによれば、安全への欲求は、帰属意識や自己実現への欲求よりも優先されるはずです。しかしこの1年で、心理学者が何十年も前から知っていたことを私たちは突きつけられました。欲求は個人差や対立するニーズに支配されており、個人的な好みによって価値観の階層が決まり、私たちの選択を左右するということです。
そのため、人と人とのつながりを長期間絶ってでも、自分と他人の安全を確保することが何よりも大切だと考える人もいれば、それとは正反対に、人とのつながりや生きている実感を得るためには、小さなリスクも喜んで受け入れるという人もいるでしょう。
しかし、自分のニーズや価値観、好みが、愛する人のそれと大きく異なる場合はどうなるでしょうか。
昨年11月、私は母との間で実際にこのような状況を体験しました。
母は自分の誕生日に、私と妹たちが家に来てハグをし、誕生日のランチを一緒に食べることを望んでいました。しかし、私の頭の中には、私たちの誰かが知らず知らずのうちにウイルスを持っていて、彼女に感染させてしまうかもしれないという可能性ばかりが浮かびます。
不可能とも思える2つの選択を迫られ、私は悔しさと無力感でいっぱいでした。誕生日に母をがっかりさせるのか、それとも母の健康、さらには命を危険にさらすのか。
結局私は世界中の忠実な息子たちと同じようにしました。まるで何事もないかのようにマスクなしで彼女の家に入り、一緒に昼食をとり、ケーキを食べ、人生について話し、そして近くの森をゆっくりと散歩しました。
彼女にとって素敵な一日になったことを心から願っています。しかし、外に出るまでの1分1秒が、私には恐ろしく感じられました。結果的にはすべてがうまくいき、同じことをして2人の愛する人を失った別の家族とは異りことなきを得ました。
大きな思い込みがひっくり返った瞬間
Attunedを開発したチームの一員である私は、社交性（マズローが言うところの「所属」）が自分にとって重要な動機付け要因ではないことを以前から知っていました。しかし世の中の94％の人は、人と一緒に時間を過ごすこと、頻繁に人と交流すること、愛する人と一緒に時間を過ごすことによって支えられることを、私よりも重要視しているのです。
40年以上一緒に暮らしてきて、そのうち16年は同じ家に住んでいますが、母も特に社交的な人とは思えませんでした。親しい友人の輪は昔からあまり変わっておらず、両親が離婚してからの30年間は1人で暮らして幸せそうにしていたことから、私は母を自給自足のできる独立した女性で、人と一緒にいないと落ち着かない人でもありませんでした。
また、私は彼女のことをリスクを取ることのできる人だと思っていました。彼女は人生のさまざまな場面で、現状がうまくいっていないときには、現状を変えることを恐れなかったからです。転職したり、新しいプロジェクトに着手したり、引越ししたり、ダイエットやスポーツ、株の投資をしたりと、常に恐れず自由に行動してきました。転校や転職の回数も多く、生まれ育ったハンガリー以外の5つの国で生活や仕事をしてきた私は、その点では彼女とよく似ていると思いました。
しかし、世界的な大流行や、母との予期せぬ不愉快な衝突を経て、私は母や私自身に対するいくつかの思い込みが間違っていたことを知ることになりました。
お互いに理解し合うのための計画
母にモチベーション・アセスメントを受けてもらったところ、私が想像していたようにいくつかのモチベーターが結果によって証明されました。母の「安全性」のスコアは2％で、ルールや予測可能性をあまり気にしないことがわかったのです。
「社交性」のスコアは30％で、それほど高くはありません。しかし、彼女自身のモチベーション欲求の階層では、「社交性」は重要であり、第4位に位置しています。
この観察結果を受けて、私はかなり前に行った自分のモチベーションプロフィールを別の角度から見ることにしました。
私にとって「安全性」は23％と全体としてはそれほど重要な価値観ではありませんが、「社会性」よりは確実に重要です。母の誕生日に感染させてしまったかどうかわからないという疑念は、一緒に過ごす時間を制限することよりも、私にとっては耐え難いものだったのです。しかし母は真逆でした。
私たちのプロフィールには、それぞれ似ている点と違う点があります。
「合理性」は、私たち二人にとってかなり重要な動機付け要因であり、彼女は42％、私は60％と、二人ともスケールの真ん中に位置しています。二人とも、世の中のことを広く読み、さまざまな情報源を参考にし、事実と意見を比較し、論理的に判断する傾向があります。しかし、同時に直感や他人の感情などの主観的な要素も考慮に入れています。
しかし、スコアに約20％の差があることから、私たちは意思決定の際に客観的な要素と主観的な要素の組み合わせを好むかどうかという、微妙な、しかし重要な違いがあることがわかりました。事実と感情が衝突したとき、私は事実に導かれることが多く、彼女は感情に導かれることが多いのです。私にとってのリスクは、自分にとっては完全に合理的と思われる行動（例えば、母の誕生日に母を抱きしめない）を、他人や自分への感情的な影響を十分に考慮せずに選択してしまうことです。彼女にとってのリスクは、自分にとっては正しいと思える行動を選択しても、他人や自分にとっては、非合理的であったり、安全に対して不注意なためにリスクがあると思われてしまう可能性があることです（例えば、金融危機の際に貯金をすべて株に投資してほとんどを失ったときなど）。
今では、両方のプロフィールを手にすることで、お互いがどのように似ていて、どのように違うのかについて、より充実した会話ができるようになりました。
これまで私は、自分のことを理性的だと思っていながら、母に理不尽なレッテルを貼っていたことがあると気づきました。2人のモチベーター分析を比較することで、私たちは自分が認めていた以上に似ていることに気がつきました。二人とも、事実に基づいて行動しようと努力していますが、人間の感情、特に愛する人の感情を大切にしているので、最後まで事実に固執しすぎないことが重要だと思っています。
私たちの分析結果を比較してみると、私は自分自身の安全性の必要性にも気づくことができました。これまでの私は、変化や曖昧さに対して比較的高い耐性を持っていると自負していましたが、自分自身でさえも、安全だと感じるためにはある程度の構造と予測可能性が必要であることを認めていませんでした。今ではこの結果を知ったことで、状況に不快感を覚えたときに歯を食いしばって無言で不満を押し通すのではなく、伝えることができるようになりました。
そして最も重要なことは、私たちのモチベーター分析結果を比較することで、おそらく人生で初めて、母が私を必要としていること、つまり私の実際の身体的存在、声の響き、笑顔、ハグ、そして母を慰めるための触れ合いを、私が母を必要としている以上に必要としていることに気づくことができたことです。
パンデミックが始まって以来、私たち2人の間に断絶が生じていることを感じてやや沈んでいたのですが、今では、私たちが病気や悲しみを抱えていたときに、母が私や妹たちを安心させてくれた多くの方法を思い出すことができます。そして、久しぶりに人との繋がりを感じています。
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