モチベーターの「フィードバック」は GIVE& TAKE
例えばあなたが心血を注いだプロジェクトがあり、まさに今あなたはそのフィードバックを待っているとしましょう。
同僚の顔色を気にしていない振りをしても、動悸は止まりません。
一瞬の間があり、あなたが求めていたもの、つまりフィードバックが届けられます。
「いいね、でも…」
誰もが経験したことのあることです。
フィードバックは私たちの成長に欠かせないものです。『モチベーション3.0』の著者ダニエル・ピンクは、TEDトークでこう説明しています。伝説の投資家ウォーレン・バフェットは、フィードバックを「贈り物」と呼びました。しかしなぜフィードバックを受け取るのが難しいのでしょうか?
フィードバックを適切に受け取るためのポイント
私の場合、フィードバックの内容が良くても悪くても、「もっと頑張ろう」という気持ちになります。時には今まで考えていなかった視点が得られ、より良い結果につながることもあります。一方で、自分の仕事について質の高い意見を得られないときは、改善に向けた明確な方向性や道筋が見えず、迷いを感じることもあります。
私はグロースマインドを持ち、フィードバックがモチベーションの大部分を占める人間です。
そんな私が、なぜフィードバックに対する最初の反応が防御的になってしまうのかについて考えてみました。
そこでわかったのは、他のことと同様フィードバックを受け取ることは練習が必要なスキルであるということです。
そのことを踏まえて、今フィードバックを求め、そして受け取るときには次の5つのステップを意識しています。
ステップ1: 意図を理解する
フィードバックを受けるとき、個人として攻撃されているように感じることがあります。
そうすると「変更の必要があるなんて、よくもまあ言ってくれたものだ。この1万字のレポートを20時間以上かけて書いたのは私だぞ!」と、こちらも個人的に攻撃してしまいそうになります。
しかし、友人や同僚はあなたを傷つけようとしているわけではありません。むしろ、あなたの改善を望んでいるからこそ、助けようとしているのです。文字通りであれ比喩的であれ、相手はあなたのチームの一員であり、そのフィードバックは、たとえそれが耳障りなものであっても、少々上から目線なものであっても、心に留めておきましょう。
ステップ2:相手の言葉に耳を傾ける
腹が立っている時は、人が言っていることがうまく耳に入らず、ネガティブな部分だけを捉えてしまいがちです。私は、カッとなったとき、そのまま怒りに任せて視野を狭めるのではなく、深呼吸をして相手の言っていることをよく聞いてみることにしています。そうすると、ほとんどの場合相手はプロジェクトを改善したり、私の仕事をさらに進めるために役立つと心から信じているアイデアを提供していることがわかります。
ステップ3: とにかくイエスと言う
気に入らないフィードバックを受け取った場合、防衛本能のせいでつい「ノー」と言いたくなります。また最初はそのフィードバックが悪い提案であると、論理的にしっかりと説明できると思うかもしれません。しかし、そこで否定・反論してはいけません。直感的に相手のアイデアを否定したいと思ったとしても、相手に肯定的に向き合い、提案された変更を実行することを想像してみるのです。
「とにかくイエス」という考え方をすることで、フィードバックを吸収し、相手が提案している目的地に到達するために必要なすべてのステップを考えるために視野を広げることができます。その過程で、相手の言わんとしていることを別の角度から見ることができ、自分の目的に照らし合わせて意味のあることだと気づくことができることもあります。
また、相手も自分の考えを伝えることに対して弱気になっている可能性もあります。あなたが相手のフィードバックをより肯定的に受け止めれば、相手は今後もあなたにフィードバックを提供してくれる可能性が高くなります。
ステップ4: 試してみる
フィードバックを提供してくれた人が自分のチームにいることを思い出し、その人の話に耳を傾け、「イエス」の精神でアプローチしようとしましたが、そのフィードバックが明らかに間違っていると感じた場合はどうしたらいいでしょうか?そんなときは無視するのではなく、一度受け取った提案を実際に試してみることをお勧めします。
フィードバックを受け取らず現状維持を貫くという選択肢もありますが、提案された変更点を試してみると効果があることがわかるかもしれません。また、異なっていたあなたとその人の2つの視点の間にまた別の解決策があることに気づくかもしれません。
ステップ5: 相手の意見に感謝する
なぜお礼を言う必要があるのか、あえて説明する必要はないと思いますが、場の雰囲気の中で身構えてしまうと忘れてしまいがちなので、一応書き記しておきましょう。友人や同僚を大切に思っているからこそ、フィードバックを求めるのであれば時間を割いて提案してくれたことへの感謝も忘れてはいけません。フィードバックは、オープンで一貫性のあるものである必要があります。フィードバックに感謝することは、相手が今後も喜んで本当のことを話してくれるかどうかを確認する良い方法です。
フィードバックを行う際の5つのポイント
誰かに対してフィードバックをするとは、それを受け取ることと同じくらい神経を使うものです。
ヒント1:つながりと理解から始める
私には2歳になる娘がいますが、正直手に負えません。新しい発見の段階に入ったばかりの私は、娘がどこから来ているのかを理解し対応するために2冊の本を読みました。ダニエル・シーゲルとティナ・ペインによれば、子供たちに「つながり」そしてその後「方向転換」を勧めることで、あなたが子どもたちに向き合いきちんと話を聞いていることを示すことができるというのです。この原理は、フィードバックを行うときにも適用できます。
まず、次のように言ってみましょう。「あなたが何を言いたいのかよくわかるけど、もしかしたら...」とか「あなたがこの方法をとった理由はよくわかるけど、こんな風にも考えてみて...」などです。
そうすることで会話が弾むだけではなく、相手は自分の意見を聞いてもらっていると感じることができ、二人の間のつながりがより深まることがわかりました。
ヒント2:命令ではなく提案をする
命令はやめましょう。
人に「こうしなさい」と言うことは、その人に対して自分が優位な立場に立つことを意味します。それが会社のヒエラルキー上正しいかどうかは別にして、人はこれを見下していると捉え、悪い反応を示すことが多いと感じてます。これを回避する一つの方法は、「私が一番よく知っているのだから、私の言うことを聞かなければならない」と言うのではなく、あくまで提案をすることです。
提案とは、次のようなもののことを指します。「あなたのやっていることは好きだけど、もしかしたらこんなこともできるかもしれない」「これはとても面白い。ただのアイデアですが、加えてこれをやってみるのはどうでしょうか」。
こうすることで、相手は自分が主導権を握っているという感覚を持ち続けることができます。
もし相手が提案を断ったら、次のように言うのがいいでしょう。「それはその通りであなたが正しいかもしれないね。でも私はただこれを試してみて、どんな風に見えるか、どんな音がするかなどを見てみたいんだ 」と。
これにより、アイデアを間違っているなどと言うのではなく、ただ他の可能性を見てみたいのだという気持ちを伝えることができます。
ヒント3:「あなた」ではなく「私」からはじめる
これは、私のライフコーチであるクリスティン・アユザワの言葉です。彼女は、フィードバックを行う際には、必ず「私」という言葉を使って始めることを勧めています。
"あなたは今これに取り組んでいると(私は)思うのですが、"どうやってそこにたどり着いたのか聞いてもいいですか?"
"私は・・・が有益だと感じています"
「あなた」で始めるのではなく。
"あなたはオフィスを出るとき、いつもドアを開けっぱなしです。"
"あなたはいつも..."
「あなた」から始める文章では非難しているように聞こえますが、「私」から始めると、自分が感じていることを述べているだけのように聞こえます。
ヒント4:批判ではなく解決策を提示する
フィードバックをする際には、常に論理的な終着点まで考えるようにしましょう。そうしないと、より良い解決策を見つける手助けをしているというよりも、問題を提供しているように聞こえてしまう危険性もあります。私の場合は、自分が何を問題視しているのかを述べた上で、その状況下で自分ならどうするかを説明するようにしています。
たとえそれが本当の目的ではなくても、解決策を提示することで、相手が取り組んでいることを気にかけていること、そして相手の改善を本当に手助けしたいと思っていることが伝わります。
「いいと思います。個人的にはとても好きです。その上でさらに加えるポイントがあるとすれば・・・」
「なるほど、あなたが取り組もうとしていることは理解しました。もし今から伝えるようにすれば、さらに良くなると思うのですが」
誰かがあなたにフィードバックを求めているということは、あなたを信頼し、あなたの意見を尊重しているということです。つまり、相手は自分が置かれている状況にどう対処するか、あなたの考えを聞きたがっているということです。
ヒント5:具体的な情報を得る
最後のヒントは、管理職や問題解決を期待されている人向けのものです。詳細を把握することは、尊敬・感謝を得られるか、短気で結論を急ぎすぎていると思われるかの分かれ目になります。
フィードバックや解決策を提示する前に、できるだけ多くの情報を集め、詳細に状況を把握しましょう。なぜ、どのようにして、何が起こったのかを聞くことが重要です。自分の考えを述べ始めたあとに、その問題が他の人のせいであったり、全く別の問題であったりしたことが判明した場合でも、過去に過剰に反応してしまったことは取り消せません。
おわりに
最後にひとつの話を紹介しましょう。
Wahl+Caseには、厳しいフィードバックをすることで有名なマネージャーがいます。私は入社したばかりの頃、彼の批判を受けていつもイライラし、心を閉ざしていました。
ある日、彼らの言葉を文字で見るのではなく、電話で聞いてみたところ、彼らの声を聞いて、彼らの真剣なトーンを認めることができました。そのおかげで、彼らが私個人を恨んでいるわけではないことがわかりました。彼らは私のチームの一員であり、私の成長を望んでいることがわかったのです。彼らの実際の言葉に耳を傾けることができ、私はイエスと言うことに前向きになるだけでなく、彼らのアイデアを試してみようと思うことができました。
今では、このマネージャーの考えを大切にし、フィードバックに対していつも心から感謝しています。
また、内発的動機付けのタイプに関わらず、フィードバックは内発的動機付けを促進し、仕事を有意義なものにするための最良の方法の一つであることを覚えておいてください。
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