外国籍の社員が活躍できる職場を築くには
世界から優秀な人材に定着してもらうためのマネジメントの秘訣
少子高齢化が進み、労働力人口が減少する現在。日本企業の多くにとって、優秀な人材を国内だけでなく世界中から発掘し、育てることが、これまで以上に重要視されるようになりました。また、ビジネス社会の変化に対応するうえでも、性別、年齢、国籍、文化的背景などが多様な人材を採用・育成し、これまでとは違った「イノベーションの種」を得ることが欠かせません。
こうしたことから、外国籍の社員の採用も増えています。外国籍の社員に期待できるのは、技術力や専門性の高さだけではありません。日本人の価値観に縛られない外国人ならではの発想により、社内に新しい風をもたらせるという点も大きなメリットです。
有名な事例は、日本最大級のフリマアプリを運営し、2018年6月に東証マザーズへ新規上場したメルカリです。同社は、インド工科大学の卒業生を中心に外国人採用を本格化させています。
では、真に優秀な外国籍の社員をマネジメントしていくためにマネージャーは何を意識すればいいのでしょうか? 彼らがやりがいをもって活躍できるようにし、それを会社の発展につなげるためのポイントを紹介します。
外国籍の社員のマネジメントで「よくある課題」とは?
外国籍の社員をマネジメントするうえで、よくある課題の1つは、マネージャーが相手の文化的背景や慣習を理解していないという点です。海外の企業文化で育ってきた人ならなおさら、職務記述書に明記された役割・業務を担当できるかどうかを重視するケースが多いです。また、自分なりにキャリアをデザインし、面談でもマネージャーに対し積極的に希望を主張する傾向も見られます。
日本人マネージャーがこうした特性を知らずに、日本企業の慣習を押し付けると、外国籍の社員との間に溝ができてしまう恐れがあります。「入社から数年間は下積み期間」などといわれた場合、彼らは自分の専門性が重視されてないととらえ、働く意欲を削がれてしまう可能性も大いにあります。海外では一般的に、新卒で最初に入社した会社への平均勤務年数は3年未満といわれ、その期間で目に見える成果を出すことが重視されています。そのため、その期間でどんなキャリアが積めるのか、どんなスキルを高められるのかを、マネージャーも意識的に相手に伝え、それをもとに人材育成プランを練る必要があります。
課題の2つ目は、外国籍の社員であることを特別視し、国民性の違いなどを意識しすぎるあまり、個々人の価値観やモチベーションの源泉を見落としてしまうという点です。マネージャーは、無意識にバイアスにとらわれている可能性があると認識し、個々人の価値観を知ろうとする姿勢が重要です。
海外赴任で現地スタッフをうまくマネジメントに成功する人の共通項とは?
日本のグローバル企業に向けて、異文化理解やコミュニケーションスキルなどに関するソリューション、日系企業の外国人スタッフに対する企業研修を提供しているファリザ・アビドヴァさんから、以前インタビューにてこんな興味深いお話をお聞きしました。
海外赴任で現地スタッフをうまくマネジメントしている社員と、そうでない社員との違いは何か。これを知るために、製造業、IT業界など多様な業界に属する日本人マネージャー200人と、日本人と何らかの協働経験がある外国人ビジネスパーソン500人に対し、インタビュー調査を行ったそうです。その後、アンケート調査の結果と合わせて、分析したといいます。明らかになったのは、海外のマネジメントに成功している人の共通項は、異なる文化背景を持った人に対して強い興味を持ち、それを学ぼうと心がけているという点です。
この「相手のことに興味をもって、それを学ぼうとする」というのは、外国籍の社員との相互理解を深めるうえでもキーになるといえるでしょう。
外国籍の社員をマネジメントするうえで意識すべき2つのポイント
1)キャリアアップのイメージを湧かせ、労働意欲をかきたてる
採用した外国人に、長く活躍してもらうためには、どうすればいいのでしょうか。
『これ1冊でまるわかり! 必ず成功する外国人雇用』という本によると、この会社には成長のチャンスと、それをサポートする制度があることを、入社時から明らかにする必要があるそうです。担当業務や評価基準、与えられる権限を具体的に伝えることで、相手は今後のキャリアアップをイメージしやすくなります。さらには、自身の目標を達成するために、より意欲的に業務に取り組んでもらいやすくなる。
2)1 on 1ミーティングなどで定期的に相手の価値観や希望を確認する
コミュニケーションの回数を増やし、相手の特性や価値観への理解を深めるには、1 on 1ミーティングが大事な役割を果たします。ポイントは、マネージャーが相手のキャリアに対する考え方、ビジョンについて、興味をもって「問い」を投げかけること。社員の思い描くキャリアプランに対し、今の職場での経験がどう役に立つのかを話すことで、マネージャーへの信頼度が高まることでしょう。
これは日本人・外国人を問わず重要なことです。
その際、メンバーがどんなときに動機づけられるのか、メンバーがどんな価値観を大事にして働いているのかを把握するには、Attunedなどの診断ツールを活用するのも効果的です。
なお、とりわけ日本企業で初めて働くことになる外国籍の社員を雇用する場合には、オープンに相談や意見ができるよう、外国人の対応を経験してきた方をメンターに据えるのも一案です。外国人の定着率アップにつながるでしょう。
国籍や民族、文化的背景が異なる人が活躍できる組織やチームをつくることは、「ダイバーシティマネジメント」の土台にもなります。国籍や文化背景などの違いよりも、個々のパーソナリティーの違いのほうが大きい。マネージャーはそうした発想でマネジメントに臨む必要があるといえるでしょう。
Attunedの結果やアドバイスを最大限に活かし、万全の態勢でマネージャーとしてのスタートをきっていただけるよう、Wahl&Caseは今後も役立つ情報をお届けします。