【セミナーレポート】社員のウェルビーイングを向上させる 心理的安全性と内発的動機を高める戦略・前編
2021年12月4日に『社員のウェルビーイングを向上させる 心理的安全性と内発的動機を高める戦略』というタイトルでオンラインセミナーを開催しました。多くの方にお越しいただき、質疑応答のやり取りも活発に行われました。今回のセミナーレポートでは、そのセミナーの中でも、Attunedの心理学者、メリッサ・タラントラ博士によるKeynoteセッションについてレポートしていきたいと思います。
メリッサ・タラントラ博士のレクチャー
心理的安全性とは
心理的安全性とは、職場で弱音を吐いたり、対人関係のリスクを取ったりしても安全だと感じることです。これが意味するのは、従業員が質問をしたり、アイデアや懸念を表明したり、さらにはミスを報告したりしても、それによって罰せられたり屈辱を受けたりすることを恐れずに発言できると信じていることです。
“安全に感じること”がなぜ重要なのかというと「自己防衛や責任追及をやめて、共通の目標を達成することに集中できるようになるため」です。もう少し分かりやすい言い方をすると、従業員は、無能だと思われるのではないか、能力不足だと思われるのではないか、不平不満やトラブルメーカーだと思われるのではないかという不安によって、組織に貢献することをためらう必要をなくすためです。
心理的安全性を高めることの利点
実際に心理的安全性を高めることに様々な利点があることが研究によって示されています。いくつかの例を挙げると、心理的安全性は次のようなことと関連があるとされています。
革新性や創造性を高め、目標達成度や資産収益率などのパフォーマンスを向上させることができる
知識の共有、フィードバック、エラーの報告など、コミュニケーションの改善にもつながる
ワークエンゲージメントと組織コミットメントのレベルが向上し、離職率が低下する
心理的安全性だけではない
しかし心理的安全性を高めるだけが良いことではありません。心理的安全性から最高の結果を得るためには、従業員が責任を持ち、懸命に働く意欲を高めるような水準が必要です。このコンセプトは、下図のような「パフォーマンス・クアドラント」と呼ばれるグラフィックで示されています。
左下のセルには「無関心(Apathy)ゾーン」があります。これは、心理的な安全性と水準の両方が低い場合に起こるもので、人々は無気力でやる気のない状態に陥ります。頑張ってもどうにもならないし、何かを変えようとしても上司に怒られるだけだ」という気持ちがあります。だから、私は黙って邪魔にならないようにして、最低限のことだけをしよう」という気持ちです。
心理的安全性を高めずに水準を高めてしまうと、右下の「不安(Anxiety)ゾーン」になってしまいます。ここでは、水準が高くても安全性が低いため、人々は不安な状態に陥ります。トラブルを避けながら、期待に応えるためにやるべきことをやる。このゾーンでは、ミスを隠したり、無能だと思われるのを恐れてわからないことを質問しなかったりする人が多く見られます。
逆に、安全性が高くても水準が低ければ、人々は「快適(comfort)ゾーン」に入ってしまいます。どうでもいいことだから、そんなに頑張らなくてもいいや、気楽に行こうと思ってしまうのです。わざわざミスをしないようにする必要もないし、ミスをしても問題にならないから」。
このように、「快適ゾーン」「無関心ゾーン」「不安ゾーン」は、あまり良い場所ではありません。それよりも、右上の「パフォーマンスゾーン」に人を集めることが大切です。安全性と水準の両方が高いところを指します。
水準が高いからこそ、人々は懸命に働き、ミスを避けようとするのです。さらに、革新的なアイデアを共有したり、ミスを避けるための質問をしたり、ミスが起きた場合には報告するなど、卓越性を達成するための行動を安心して行うことができます。
心理的安全性と内発的動機づけ
"心理的安全性"のもう一つの大きなメリットは”内発的動機づけ”への影響です。内発的動機づけとは、最高品質の動機づけ、または動機づけの最高峰と考えられており、企業の収益と従業員の福利厚生の両方に、無数の利益をもたらします。従業員が内発的に動機づけられていると、彼らはより熱心に働き、より創造的で、会社や会社のミッションに献身的に取り組みます。また、仕事のストレスや疲れが軽減され、重要な意味を持つようになると報告しています。いくつかの例を挙げてみましょう。
そしてごく最近、研究者たちは心理的安全性と内発的動機との関係を調べ始めました。そして、心理的安全性を高めることを目的とした介入が、内発的動機を高めることを示す研究結果が出ています。
つまり、心理的安全性の向上に注力することで、従業員がより革新的になり、より多くの問題を解決できるようになるだけでなく、内発的動機づけに付随するあらゆる望ましい効果を得ることができるということです。
明日からできること
さて、心理的安全性の重要性を理解していただいたところで、"自分の会社で心理的安全性の風土を築くためには何からどうすればいいのか?"とお考えではないでしょうか。それはただ「始めるだけ」です。
まずチームとの話し合いを始めることです。心理的安全性の概念を紹介し、なぜそれが重要なのか、説得力のある根拠を示します。そして、心理的安全性を育むための提案をチームと一緒に考えます。部下に懸念を表明する場を与え、選択肢と裁量権を与えるエンパワーメント型のリーダーシップのアプローチは、心理的安全性を構築し始めるだけでなく、チームメンバーの内発的なモチベーションを高めることになります。
次のステップでは、あなた自身が行動のモデルとなって、チームにその方法を示すことです。 経営者が従業員に対して模範とすべき最も本質的なことの一つは、自分が何かを知らないときや間違いを犯したときには率直に話す姿勢です。また自分たちがやっている仕事は複雑で、ミスは避けられないものだと明確に認識することで、失敗やミスのイメージを払拭します。そして従業員がミスや懸念事項、改善提案を報告することを明示的に奨励します。従業員が自分の正直な間違いを認めたり、あなたの決定に懸念を示したり、物事を改善するための提案をしたりしたとき、怒ったり、非難したり、罰したり、彼らのスキルや能力を疑ったりしてはいけません。代わりに、感謝の言葉を述べた後、相手が開示した情報を、学習の機会や将来の失敗を避けるための重要な情報として組み立てるのです。さらにもう一つの重要な行動は、全員の声を聞くことです。例えば、ディスカッションで全員に貢献する機会を与えることなどです。
最後のステップとして、従業員のフィードバックやエラー報告を引き出すために特別に設計された仕組みを構築してみましょう。例えば、月に一度、全従業員を対象としたミーティングを開催し、たとえ「一番下っ端」の従業員であっても、仕事の進捗状況、改善の余地がないか、ミスをしていないかなど、意見を求めるのです。
心理的安全性と内発的動機づけのためのエクササイズ
これからご紹介する「共感エクササイズ」は、私がセラピストとして共感力を高める上で非常に役立ったエクササイズです。 この共感エクササイズは2つのパートに分かれています。
まず最初のステップは、じっくりと時間をかけて、従業員やチームメイトが仕事や同僚との関係、会社の最近の変化などで悩んでいる可能性のある方法をすべてリストアップする必要があります。
そして、第2のステップは、自分がその社員やチームメイトとして、先ほど挙げた苦労を乗り越えようとしている姿を、純粋に考えてイメージすることです。イメージするといっても、本当に目的を持ってすることです。カレンダーに30分だけ予定を入れて、オフィスのドアを閉め、座って目を閉じ、頭の中で自分がそれぞれの苦悩に遭遇している場面を1つずつ思い浮かべてみてください。
ビジュアライゼーションでは、具体的に以下の点に注目してください。(1)自分が感じるであろう感情、(2)その葛藤が自分の見方にどのような影響を与えるか、(3)その葛藤が同僚や上司の見方にどのような影響を与えるか、などです。
自分が社員やチームメイトになった姿をイメージするのが難しい場合は、代わりに自分の子供や配偶者、親がリストの問題に対処している姿をイメージしてみてください。 感情の識別が難しい場合は、ブラウザで「感情の輪」という言葉を検索してください。
ホワイトペーパー
今回レクチャーをしたメリッサ・タラントラ博士による最新のホワイトペーパーもございます。「心理的安全性を高める“アフターコロナ”の職場づくり」というタイトルのもと、企業が心理的安全性と内発的動機づけを職場文化に組み込む方法を調査し、今日から始められるシンプルで効果的な戦略を紹介しています。より生産性の高い新しい働き方の実現に興味のある方はこちらからダウンロードしてください!
オンラインセミナーのご案内
2022年1月18日14時より『次世代リーダーの仕事の充実感を高める 心理的安全性のつくりかた 〜マネージャーの負担を減らす1on1を実現するには?』というオンラインセミナーを開催致します。
本セミナーでは、次世代のリーダーとなることを期待される部下の心理的安全性を向上させることが、マネージャ自身の負担を減らし、疲弊から救うメカニズムを解説し、「関係性の質」を改善する具体的な手法について紹介していきたいと思います。また最近「1on1ミーティング」を導入する企業も増えていますが、1on1ミーティングが根付いている外資系企業での経験が豊富な講師より「1on1の効率化ポイント」についてもお話します。
下記のリンクからお申し込みください。
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