モチベーションの最新状況 2024
2月28日に行われたこのウェビナーではAttunedで集計した膨大なデータを用いて、全体的なモチーベーションのトレンドを豪華パネリストが解説しました。パネリストには名門のキングス・カレッジ・ロンドンのキングス・ビジネス・スクールに所属しており、組織行動学と人材管理の准教授を務めているアマンダ・ジョーンズさんとアリゾナ大学エラー・カレッジ・オブ・マネジメントの管理と組織の准教授を務めているサラ・ドイルさんのお二方です。
安全性、社交性、ステータス、利他性などのモチベーター
ウェビナーでは、安全性、ファイナンス、競争性、利他性、ステータスなど、11のモチベーターについて議論されました。その中で最も重要視されたモチベーターは「安全性」でした。これは予測可能性、明確なルール、責任の明確化、そして生活のあらゆる面での安定性への欲求と定義されています。アマンダ准教授は、この傾向をインフレや雇用の不安定さと関連付け、特にギグエコノミーの拡大による影響を指摘しました。また、「社会的関係」の重要性が増加傾向にあることが明らかになりました。その「社会的関係」を象徴するといえる「利他性」は常に高い順位を維持しています。一方、「ステータス」は4年連続で低下傾向にありますが、依然として上位にランクインしています。
「ステータス」モチベーターを深掘り
ステータスがランクを下げた理由の一つとしてSNSの普及が挙げられました。このモチベーターは職場以外でも満たすことができるということです。何かプロジェクトをやり遂げたことを報告したかったり、昇進したことを発表したい場合にSNSをツールとして利用できます。
ステータスというモチベーターの優先度を実際よりも低く見せたいという人間の心理やバイアスが結果に出てるのかもしれません。一方で最近では年功序列よりも成果主義へと転じている会社が多く、成長意欲の高い若者はステータスを重視するかもしれません。
サラ准教授の研究によると、ステータスの獲得は必ずしも他者への配慮や協力を促進しないことが示されています。昇進などでステータスを上げた社員は裁量が大きくなるにも関わらず利他性の上昇には繋がらないという結果が出てるのです。それに対してステータスが周りに比べて低い人も自分の影響力の低さから利他性が低くなりがちです。
リモートワークが社会的関係に与える影響
リモートワークが若者の社会的関係に与える影響についても議論されました。アマンダ准教授は、リモートワークが孤独感や疎外感をもたらす可能性があるものの、若者にとっては当たり前のものになりつつあると指摘しました。サラ准教授は、リモートワークによって、親密な社会的関係が重視されるようになったと述べました。自分と似た価値観を持つ人と強い絆を築く反面、異なる価値観を持つ人々との分断が深まる可能性があると警鐘を鳴らしました。
自律性の低下と合理性の重要性
「自律性」はここ数年低下傾向にあり、今年は過去最低の10位となりました。これは、多くの労働者がすでに十分な自律性を持っているためと考えられます。多くの仕事では、リモートワークやフレキシブルな勤務時間が当たり前になりつつあり、自律性が仕事の満足度やエンゲージメントに不可欠であるとアマンダ准教授は強調しました。一方、「合理性」は最下位でしたが、職場を物理的・文化的に再設計する必要性が高まっていることから、その重要性は増していくと予測されます。
まとめ
本ウェビナーは、変化する世界におけるモチベーションの複雑さと、安全性、社会的関係、自律性などの要因が相互に影響し合う様子を浮き彫りにしました。職場のニーズが急速に変化する中、組織はこれらの変化に適応し、従業員の幸福と生産性のバランスを取る必要があります。