新入職員の早期離職を防ぐ!仕事にやりがいを見出す ジョブ・クラフティングとは?
皆さんは今の仕事にやりがいを感じていますか?やりがいは大事なことだと思っていますか?
新卒入社した大卒の3割が3年で辞めるというデータは、何を示しているのでしょうか?
数々のアンケート調査では、労働時間、休日などの待遇面での理由の他に、人間関係やキャリアアップなどの理由が挙げられています。
待遇面を除いた理由を一言で言うと、3年の間に「その仕事に自分が期待していたやりがいを見いだせなかった」ということになるのではないでしょうか。
もちろん、会社としては労働条件を整えることに真摯に取り組む必要はあるでしょう。ではそれ以外の、やりがいを作り出していくにはどのような考え方が必要なのでしょうか?
そのための手法として注目されているのが、ジョブ・クラフティングです。
ジョブ・クラフティングとは、従業員自身の仕事に対する認識を変えることで、やりがいをつくりだすことです。
モチベーションの条件として、仕事への意味を感じることが重要と指摘されるように、ジョブ・クラフティングは仕事へのモチベーションを引き上げる手法として近年注目されています。
ここでは『人事のためのジョブ・クラフティング入門』(川上 真史、種市康太郎、齋藤 亮三著 弘文堂)という本をまとめていきます。
その中で、ジョブ・クラフティングの定義、実践の手法やジョブ・クラフティングをしやすくするためのポイントについて解説していきます。
1 ジョブ・クラフティングとは?
ジョブ・クラフティングとは仕事の意義や意味を捉え直すことでエンゲージメント(働くことへのポジティブな気持ち、充実感)を高め、やりがいを創出することです。
ジョブ・クラフティングでは自分で考えて裁量を持って働くことで今の仕事を魅力的に、そして意味のあるものに変えることができるでしょう。
最も大切なポイントは、従業員自身がやりがいを見出すことで仕事への認知的な変化を加えるということです。
つまり、仕事の解釈が変われば今の仕事をより魅力的に感じられるというものです。大切なことは、会社や組織が従業員の認知を“変えさせる”ことはできませんが、ジョブ・クラフティングのためのヒントを提供したり、上司が促してあげることで部下はジョブ・クラフティングがしやすくなるはずです。
2 ジョブ・クラフティングの実践法
ではいったいどのようにして社員がジョブ・クラフティングを行えばよいのでしょうか?
また、上司は部下に対してどのようなアドバイスをすれば、それを促すことはできるのでしょうか?
ジョブ・クラフティングの方法を3つお伝えします。
① プロセスのクラフティング
② 関係のクラフティング
③ 意味のクラフティング
① プロセスのクラフティング
これは目標を達成するために仕事自体のすすめ方を工夫することです。自分のやり方でプロセスを立てて目標を達成することで大きな達成感を得ることができます。
この際に上司やマネージャーは従業員に向けて明確な指針を立ててあげることがジョブ・クラフティングにつながります。
例1 30代男性Aさんは新商品の開発チームでマネージャーをしている。そこでは営業、マーケティング、デザイン部など様々なメンバーが集まるミーティングで意見をまとめるのに苦労していた。
彼はチームのメンバーがバラバラな原因を開発商品のコンセプトやチームとして目指すビジョンを共有できていないことだと感じた。そこでミーティングで配布する資料の冒頭に必ず、「できない理由より、実現するための方法を」というビジョンを印字した。それ以降、アイデアが活発に出るように目標への道が明確になった。
これは上司が目標達成のために部下の仕事をジョブ・クラフティングしたと言えるでしょう。
② 関係のクラフティング
仕事に対して前向きになるためには共感関係(同じ目的に向かって歩んでいくヨコ関係)を構築していくことが大切です。その条件として
1相手を認めること
2相手にメリットを提供したいと思うこと
3根拠に基づいた絶対的自尊感情をもつこと
この3つが挙げられます。これをすることで従業員の仕事へのモチベーションやのめり込みを高めることができ、仕事にやりがいを見出すことができます。
例2 20代女性Bさんは広告代理店の営業職で、中堅文具メーカーのクライアントを担当している。入学シーズンに合わせてデパートのチラシに掲載するキャンペーンを企画していた。印刷に入ろうとしたタイミングで新たな感染症の流行が発覚し、印刷がストップしてしまった。
そこでBさんは文具メーカーに対して、
① 紙のチラシに代わって電子カタログを制作すること
② その電子カタログから直接商品を購入できるECサイトを構築すること
③ デパートに対してオンラインマーケティングとキャンペーンの施策を持ち掛けること
この3つをBさんは提案し、新たな販路を軌道に乗せました。クライアントからも信頼されて、中長期的なマーケティング戦略のパートナーとして関係を構築することができました。
これはまさに同じ目的に向かうヨコの関係(①)であり、クライアントにメリットを提供し、(②)自分の施策に自信があった(③)からこそできたまさに関係のクラフティングと言え、ジョブ・クラフティングへと繋げたと言えるでしょう。
③ 意味のクラフティング
自分の仕事への意味を考え、意義を再発見することでエンゲージメントを向上させることができます。ここでは3人のレンガ職人の話が例に挙げられます。
まず、一人目は「家族を養うためにレンガを積んでいる」と答え、次に、二人目は「自分の技術を磨くために大きな壁を作っている。」と答えました。そして三人目は「大聖堂をつくっているんだ。完成したら、きっと街のみんなが喜ぶよ」と答えました。
この三人目の職人はただ仕事をするだけでなく、目の前のやるべきことがどう実際の社会につながるか理解できているため、意味のクラフティングができていると言えます。さらに具体的な場面での例も紹介します。
例3 30代男性Cさん(通信業・システム開発担当)は新規事業である過疎化した地域の空き家と移住を希望している人をマッチングさせるアプリの開発を任された。新しいプログラミングのスキルや外部スタッフとの調整に加えて、上司からのスケジュールの前倒しでCさんは疲弊してやりがいを見出せていなかった。
そこで、上司から「今回のプロジェクトは難易度が高いからこそキャリアで転機になり、昇進につながる」と言われてCさんは自己の成長のためだと意義を見出すことでやる気を出すことができました。
このように仕事の意味や意義を自分で見出していこうというのが意味のクラフティングで大切であるといえます。
3 ジョブ・クラフティングをしやすくするためには
ここまでジョブ・クラフティングの実践の仕方について説明してきました。
ジョブ・クラフティングをするには自分の内発的動機(自身の内部から生まれるやる気)を理解し、やりがいの源泉を把握することが非常に大切です。
マネージャーは部下に内発的動機を理解させることでジョブ・クラフティングが可能になるのではないでしょうか。
例えばマネージャーが部下に何か資格を取らせたいと考えた際に、ただ資格を取れと指示するのではなく、何をやりがいに感じるのかを一度考えてから声をかけるのが大切です。自身の成長がやりがいに感じる人には「この資格を取ることで、あなたは成長できる」と声をかけてみたり、誰かの役に立つことをやりがいに感じる利他性がモチベーションになる人であれば「あなたがこの資格を取ることで組織へのメリットが大きい」と伝えるような、その個人に適したジョブ・クラフティングが可能になるでしょう。
組織に属する個々の従業員の内発的動機が分かると、ジョブ・クラフティングは実行しやすくなります。
今後求められるマネージャーの役割として、部下やチームメンバーに対して自分自身がどのような時にやりがいを感じるのかの言語化を促し、気付きを与えることがとても重要となるのです。
Attunedではやりがいの元を発見するためにモチベーターを11に整理し、価値観を可視化しています。
これによってジョブ・クラフティングをより明確に意味のあるものにできると思います。興味がある人はこちらからAttunedの無料トライアルを試してみてください!