内発的動機づけとは?それは個人の内側から湧き出るもの
内発的動機づけは、外部要因によるものではなく、自分が興味を持ったり、楽しんだりしているからこそ、課題や活動を遂行しようとする意欲と定義されますが、個人の世界観や好みと強く関連しています。
1.学習の本質的な動機とは?
1987年に発表された教育環境におけるモチベーションに関する有名な研究『学習を楽しくする:学習の本質的な動機の分類*』で、トーマス・マローンとマーク・リッパーは、「人は外部から報酬または賞罰を受けるためではなく、自分のためにそれに取り組みます。楽しい、面白い、魅惑的、楽しい、そして内発的動機という言葉は交換可能です。」と説明しています。
*Thomas Malone and Mark Lepper “Making Learning Fun: A Taxonomy of Intrinsic Motivations for Learning” 2016
著者はさらに、内発的動機を促進する主な要因を説明します。挑戦への欲求、自分の道をコントロールしたい、または自分のために選択したいという欲求、協力することで得られる満足感、競争を楽しむこと、感覚的か認知的かに関わらず好奇心があること、想像力を掻き立てるようなタスク、そして承認への欲求などが含まれています。
2.内発的動機づけがパフォーマンスの向上や満足度の向上
その後の研究では、これらの内発的動機を拡大・洗練してさまざまに分析されてきましたが、内発的動機がパフォーマンスの向上や満足度の向上などのポジティブな結果に結びついているという点では大方の意見が一致しています。
クバースらは、「内発的な動機づけは高いエネルギーレベルと持続性に関連している」、「ポジティブな熱意とエンゲージメント、繁栄、および幸福と関連している」と指摘しながら、「内発的動機はまた、状況に応じた仕事のパフォーマンスや創造性と正の関連性を持っている」と説明します。
さらに、内発的な動機づけは、ポジティブな感情や態度と関連しており、個人、チーム、または職場内だけでなく、従業員の仕事以外の生活や家族にもその影響はおよびます。
「内発的に動機づけられた経験を持つ者は、自分の行動をコントロールできるため、仕事と家庭生活のバランスをとることができる可能性が高い従業員なのです。」そのため、「企業は従業員の内発的なモチベーションを高めることに焦点を当てるべきである。」と結論づけています。
3.内発的動機こそが創造性を力強く生み出している
アマビール教授は自身の研究を振り返り、次のように述べています。
「外因的な動機ではなく、内発的動機こそが創造性を力強く生み出しているのです。人々は、主に仕事自体への関心、楽しみ、満足感、個人的な挑戦によって動機づけられている時が、最も創造的になれるのです。」
前述の40年間のメタ分析では、「インセンティブが与えられるかどうかに関わらず、内発的な動機づけがパフォーマンスに与える影響は中〜強の予測因子である」との結果が出ています。
4.動機づけとは障害や問題に直面したときの解決への方向性と粘り強さ
しかし、内発的動機の恩恵を受けるのは、個人のパフォーマンスや満足度だけではありません。
ヴァン・ディック教授が指摘する3つの好影響とは、自発的に自分の仕事に興味を持っている人は、パフォーマンスが向上する傾向があるだけでなく、問題を予見し問題が発生したときでも柔軟に対応でき、解決策を見つけようとする忍耐力を持つ傾向が強いということです。
「結局のところ、動機づけは、私たちが費やす努力のレベルだけでなく、障害や問題に直面したときの解決への方向性と粘り強さでもあります。自発的な動機づけのある人々は、前述の3つの側面すべてを示します。より多くの努力をすることで、彼らは正しい方向に進み、問題が発生した場合により粘り強く対処することができるということです。」
ヴァン・ディック教授によると、内発的動機づけは、通常は外部報酬が最も効果的であるとされている、退屈で反復的な仕事の種類においても、役割を果たすことができます。
「組立ラインのような、最も単調な作業でさえ、ある程度のモチベーションが必要なので、ここでも幸せで内発的な動機を持ったやる気のある従業員は、報酬のためだけに組立ラインにいる従業員よりも高いレベルでパフォーマンスを発揮します。」
教授は続けて、ここで考えなければならないパフォーマンスには2つのタイプがあることを強調しています。
「直近10年の組織心理学または経営科学において、役割内の業績と役割外の業績を区別していることを理解する必要があります」と彼は説明します。
役割内のパフォーマンスの例として、自動車の販売員が販売する車の数によって評価されていることを挙げています。しかし、世界金融危機や現在のパンデミックの状況では、どれだけやる気と実績を持っていても、自分の手に負えない要因によって販売台数が左右されてしまうというように、その指標が営業担当者のパフォーマンスを適切に判断できない場合もあります。
5.役割を超えたパフォーマンス
ここで、役割を超えたパフォーマンスという概念が登場します。
「それは、過労に陥っている同僚や組織に新しく入ってきた同僚を助ける、革新的な提案をしたり、良き組織構成員であったりすることです。これらは通常、直接的な報酬や契約には含まれていませんが、会社組織にとっては有益であり、最終的には収益性や財務の持続可能性に大変役立ちます。」
また、モチベーションと役割外のパフォーマンスとの相関関係は、モチベーションと役割内のパフォーマンスとの相関関係の2倍です。
「役割内と役割外の両方の側面を考慮すると、従業員のモチベーションが組織の全体的なパフォーマンスを大きく左右すると考えています。」
6.従業員の内発的動機は、企業や組織にとって非常に重要
これらの事実から明らかになるのは、従業員の内発的動機は、企業や組織にとって非常に重要だということです。
また、クバースらが述べているように、たとえ関連性がある場合でも、内発的動機と外部動機は別に対処する必要があります。別の言い方をすれば、組織が従業員の内発的動機を理解するために時間をかけてから、従業員にインセンティブなどの外部動機を与える最善の方法を決定することが重要です。
ホワイトペーパー『モチベーションを高める動機づけの最先端』
今回のブログは、Attunedホワイトペーパー『モチベーションを高める動機づけの最先端〜従業員の内発的動機を理解することが変化を乗り切るビジネスの鍵』をもとに執筆致しました。内発的動機づけについて、さらに知りたい方は、ぜひホワイトペーパーをお読みください!