組織エンゲージメント測定の次の一手 ジョブ・クラフティングを活用したモチベーションアップ施策
アフターコロナを見据え、組織エンゲージメントの数値化の取り組みが広く実施されていますが、一方でエンゲージメントの数値化だけでは組織の根本的な問題が発見できないとの声を耳にします。2022年5月26日に行われたHRカンファレンス2022春の講演では、社員の内発的動機にあわせた働きかけを行うマネージャーの対話力の向上による「ジョブ・クラフティングを通じたモチベーションアップ施策」について、TIS株式会社 産業公共事業本部 産業ビジネス第1事業部 メディアビジネス第2部 部長 西岡 毅氏をお招きして活用事例を交えながらお伝えします。
1 ジョブ・クラフティングとは?
はじめに、Attuned シニア セールス マネージャー 飯田 蔵土より、ジョブ・クラフティングとは何なのかについて説明しました。
今から数千年前にピラミッドを作っていたチームには生産性の高いチームと低いチームがありました。その違いは「あなたはなにをしていますか?」という質問の回答に対して表れていました。生産性の低いチームは「大きな岩を毎日運んでる」と答えたのに対して、「未来永劫残る王様のお墓を作っている」と答えたのです。
これは、同じ仕事でも捉え方によって生産性が大きく左右されることを示しています。この考え方は「ジョブ・クラフティング」へと通じてきます。「ジョブ・クラフティング」とは仕事の意義や意味を捉え直すことでエンゲージメント(働くことへのポジティブな気持ち、充実感)を高め、やりがいを創出することです。
内発的動機にもとづくジョブ・クラフティング
Attunedを活用していただくことで、実際に相手の内発的動機に寄り添ったジョブクラフティングを行うことが可能になります。
例えば部下にとって欲しいある資格がある時、「成長」への欲求が高い部下に対しては「あなたの成長のためになる」という動機付けが有効です。
しかし問題は、このようなモチベーションで仕事をする部下だけではなく、同じ職場であっても色んな方が働いているということです。
そのような場合、同じ資格取得であっても、例えば「利他性」の高い部下に対しては「あなたが資格を取得することで事業部全体ができることが増える」というように、より利他的なメリットを提示する方がより強い動機付けとなるのです。
これは要するにジョブ・クラフティングをしているわけですが、このように伝えることで部下に「資格を取ることは自分のためだけではなく、組織のためになるんだ」という認知の変化を与え、組織のために一生懸命頑張りたいというその部下のモチベーターを刺激することができます。
Attunedは内発的動機を可視化してチームごとに統合、分析するサービスですが、それだけではなく、マネージャーをコーチングを通じて支援するサービスもご用意しておりますので、実際の現場での施策に結び付けていただくことができます。
このジョブ・クラフティングを一つの部門全体で行い、エンゲージメント向上に成功したTIS様の事例を紹介していきます。
2 TIS株式会社Webエンジニア部門でのエンゲージメント施策
続いて、TIS株式会社産業公共事業本部 産業ビジネス第1事業部 メディアビジネス第2部 部長の西岡 毅氏より、Attunedを実際に導入してからの結果までのプロセスのお話を頂戴しました。
背景 過去には離職者が3〜4人程度年間で発生しており、部門の役割の変化も伴ってモテベーション低下を危惧していました。そこで部門の役割は変えられないがエンゲージメント向上のために状況の可視化〜対策を実施することとなりました。
Attunedの導入 メンバーのやりがいやモチベーションの源泉はどこからきているのかを可視化するためにAttunedの導入へと至りました。隔週のアンケートの結果で状況をモニタリングしました。
実際の施策 「ファイナンス」に対して昇給より高い報酬を求めている人が多いことがわかりました。また、昇格をどうすればよいかやボーナスをもらうために何をすれば良いかがわかりにくい状況でした。そこで、役職者向けの評価基準を定量化し、透明性を向上させました。また、「成長」や「社交性」の向上を目指した草の根勉強会を開催しました。オンラインでやりやすくなり、資格取得を目指して仲間どうしで取り組むことでよりつながりができました。
結果 年に一回実施している社員満足度調査のスコアが改善しました。また、直近2年間、退職・異動者がゼロという結果となりました。さらに、エンゲージメント向上の施策を行っている点が評価されたことで社内公募制度により6名(半年で2名ペース)仲間が増えています。
今後の課題 お客様やビジネスパートナー様も巻き込んだ施策がキーとなるのではないかと考えています。
3 西岡 毅氏と飯田 蔵土の対談
世代間のギャップをAttunedによって可視化する
飯田 先ほど20年ほど同じ部署で働いていたとおっしゃっていて同僚のことも相当理解されていたと思うんですけど、Attunedを導入して意外だったことはありますか?
西岡 わかっているようでわかっていないことがありました。特に、年齢が高いマネージャー陣はフィードバックを重要視していませんでしたが、若手はフィードバックを欲していることがAttunedによって可視化されました。この結果を受けて、マネージャー陣はフィードバックを積極的にするように変えていき、エンゲージメントの向上へとつながったのだと思います。
飯田 非常に面白い話ですね。このような世代間での違いも感じられたということですね。
やりがいを感じられるようなアイデアを考える
飯田 TIS様の取り組みからオンラインの飲み会や勉強会のようにやりがいを見つけられるようなフックを個人に応じて作られたように感じましたがどのように考え出したのですか?
西岡 6つのチームから1人ずつエンゲージメントの担当を出して、その6人で毎週30分のミーティングをすることでチーム内でのことはもちろん、部門全体の施策も考えていました。
4 ジョブ・クラフティングは「やりがい搾取」なのか
セミナーの最後に、視聴者の方から頂戴した質問への応答を行いました。その中から一部をご紹介します。
Q: 社員の給料が上がらないこのご時世でジョブ・クラフティングの話をすると「やりがい搾取」と言われてしまいそうです。どうしたら良いでしょうか?
西岡 ファイナンスのモチベーターが組織の中でも上にある一方で、部門単位で給料を上げることはできないなか、評価に対して丁寧に話すのが大切と考えています。
飯田 ジョブ・クラフティングには人を操っているとかコントロールしているような印象を持たれるかもしれませんが、やる仕事が変わらないとすればそこに対してより前向きになれることは重要ですし、やりがいを見つけて仕事に意味を見出すことはストレスの軽減のためにも有効なアプローチです。「やりがい搾取」というよりはより自分自身がハッピーに楽しく仕事ができるようにすることであると私は考えています。
Q: ファイナンスに対する不満はどの会社にもあると思うのですが、マネージャーとして昇給させる権限がない場合はどうすれば良いですか?
西岡 これに関してですが昇給に対してもできる限りの努力をしました。この人はこれをやったからこの評価として、マネージャー全員で共有して、それがボーナスにつながるようにして、評価に納得感を持たせるようにしました。
飯田 研究でもファイナンスは金額の絶対額ではなく、もらっている金額の正当性や評価が理解できることが大切だとわかっています。素晴らしい取り組みをされていると思いました。
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登壇者紹介:
西岡 毅氏
TIS株式会社 産業公共事業本部 産業ビジネス第1事業部 メディアビジネス第2部 部長
新卒で東洋情報システム(現TIS株式会社)に入社。システム開発のプロジェクトリーダ・マネージャを経て、2019年より現部門の部長を担当。同時期に組織の役割変更があり、離職者の増加を危惧し、Attunedを利用したエンゲージメント活動を開始。21年度は離職者ゼロを達成し、社内表彰も2度受賞している。
飯田 蔵土氏
Attuned シニア セールス マネージャ
日本HPでSE(電子マネーに関するBizモデル特許取得)としてキャリアをスタートさせたのち、外資ファームでM&Aアドバイザー、戦略コンサル、外資メーカーで事業部長、管理本部本部長を経て、 2020年よりAttunedの事業責任者を務めている。一橋大学大学院修了。MBA in Finance。行動経済学会会員。
セミナー「企業成長の鍵:ワーク・エンゲイジメントの重要性と最先端のHR分析事例」の要点をまとめました。弊社と業務提携をしているHR Buddy 研究所の研究員である南遥夏様に「ワーク・エンゲイジメントとHR分析事例」についてお話し頂きました。