【セミナーレポート】自律型人材と支援型リーダー育成の鍵は 「内発的動機の見える化」
2021年9月15日(水)、HRサミット2021 ONLINE【ライブ配信講演】にて、Attunedは「自律型人材と支援型リーダー育成の鍵は 「内発的動機の見える化」〜マネージャーの「対話力」強化とジョブ・クラフティングのポイント」と題したセミナーを行いました。
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授・合同会社THS経営組織研究所 小杉俊哉氏、NTT PCコミュニケーションズ 営業本部 戦略企画部長 佐村 俊幸氏にゲスト登壇いただきました。ダイジェストでお伝えします。
自律型人材が求められる背景とその課題
はじめに小杉 俊哉氏(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授・合同会社THS経営組織研究所)より、いま自律型人材が求められる背景とその課題、またジョブ・クラフティングの考え方についてお話をいただきました。
コロナ禍で社員が気づいた、会社にとって都合の悪いこととは?
コロナ禍において、多くの社員が「経営層や上司が答えを持っていない」ということに気づきました。これは言ってしまえば当たり前のことなのですが、改めて白日の元に晒された形になります
しかし経営層や上司が答えを持っていないとすれば、一体どうすればいいのか。
ここで自律型人材の必要性が浮かび上がります。
求められる新たな能力
20世紀はノウハウの時代と言われましたが、21世紀になると「知っている」ことは大して偉くない。情報はすぐに陳腐化し、誰でもインターネット上簡単に手に入れることができるようになったからです。
それよりも重要なのは “Know what”、つまり課題発見や仮説構築の力がより重要になりました。
この力は、いわゆる受験勉強の延長にはありません。自ら頭を使って問題文を作る側に一人一人が回らなければいけない。
一般的に海外では、目指したいビジネスの形に応じて人材を獲得しますが(Talent on Demand)、日本ではいまだに新卒採用をして育成する形が一般的です。
この形は高度経済成長期には非常に有効に機能しましたが、今は発展の足枷となる場面も多く見られます。
こういった違いを受けて、できるだけ多様な人材に自律的に働いてもらわないと経営の将来はないのではないかと多くの経営者が考えるようになったのはごく自然なことではないでしょうか。
これが広い範囲を自分事化し、自律的に動くことができる人材が求められるようになった背景です。
組織と個人は、親子関係から大人同士の関係に
また組織と個人の関係も、一方的な命令で成立していた上下関係から、より双方の努力が求められる大人同士の関係に移行しました。
上下関係では放っておいても社員は動いたのですが、これからはそうはいかない。
会社は優秀な人材を集めるために魅力的な関係を用意する必要がありますし、社員もエンプロイアビリティ(雇用能力)を高めるような自助努力をする必要が出てきます。
今までのやり方では創造的な仕事に対応できない
さて日本企業の自律支援に置ける課題のひとつのは、未だに人事が各社員の多様性を加味せず一律に当てはめていることにあります。
自律的に働く多様な人材が求められる今日、本当に社員の多様性から目を逸らして組織を運営することができるのでしょうか。
またその多様性を知るすべを与えないまま、現場のマネージャーに一任してしまっている場合もあります。
今の日本の企業は非常に創造的な仕事をしており、もう飴と鞭で人を動かせる段階にはありません。いかに仕事を目的にし、興味関心を持って取り組んでもらうことができるのか。そういった点へのアプローチが非常に重要な鍵になっていると言えるでしょう。
認知を変えることで、仕事の意義を見出す
さらにジョブクラフティングという考え方もあります。
同じ仕事でも、その見方を修正すれば仕事自体を目的にできるという考え方です。
まず目の前がどんなに単純作業や、大きな業務の中のひとつであっても、それがどのように社会に貢献しているのかなどを知り、見方を変えることでやる気は起こり得るということです。
また仕事のやり化の範囲を見直し、自分の強みや関心を盛り込む。そして周りとの関係性を改善することで、個人を動機づけ、エンゲージメントを高めながら仕事をしてもらうことが可能になります。
Attunedは、相手の価値観を理解するツール
続いてAttuned シニア セールスマネージャー 飯田蔵土より、相手を理解するツールとして開発されたAttunedのご紹介、またその具体的な活用方法について説明しました。
自分のものであれ部下のものであれ、「働く理由」をはっきり知っている方、またそれをしっかり言語化できている人は、どれだけいるでしょうか。
それもそのはず。働く理由は人によって全く異なるそれぞれの価値観と結びついており、さらに厄介なことにその価値観は目で見ることができません。
価値観を通じて、個人にとっての仕事をより有意義なものとするためには、部下が求めている支援が何なのか、そしていつ支援をすべきなのかを知るための対話が必要になります。
内発的動機を可視化し、対話を促すツールがAttunedです。
フランクフルト大学等との共同研究によって、人の内発的動機に影響を与える要素(=モチベーター)を11個に分類し、要求度を数値化するものになっています。
ちなみに、こちらが私自身のモチベーターレポートの内容です。
内発的動機にもとづくジョブ・クラフティング
Attunedを活用していただくことで、実際に相手の内発的動機に寄り添ったジョブクラフティングを行うことが可能になります。
例えば部下にとって欲しいある資格がある時、「成長」への欲求が高い部下に対しては「あなたの成長のためになる」という動機付けが有効です。
しかし問題は、このようなモチベーションで仕事をする部下だけではなく、同じ職場であっても色んな方が働いているということです。
そのような場合、同じ資格取得であっても、例えば利他性の高い部下に対しては「あなたが資格を取得することで事業部全体ができることが増える」というように、より利他的なメリットを提示する方がより強い動機付けとなるのです。
これは要するにジョブ・クラフティングをしているわけですが、このように伝えることで部下に「資格を取ることは自分のためだけではなく、組織のためになるんだ」という認知の変化を与え、組織のために一生懸命頑張りたいというその部下のモチベーターを刺激することができます。
Attunedは内発的動機を可視化してチームごとに統合、分析するサービスですが、それだけではなく、マネージャーをコーチングを通じて支援するサービスもご用意しておりますので、実際の現場での施策に結び付けていただくことができます。
社員の本音に応え、挑戦を続ける組織を作るために(Attuned活用例)
最後にNTT PCコミュニケーションズ 営業本部 戦略企画部長 佐村 俊幸氏より、実際のジョブ・クラフティング施策におけるAttuned活用例についてお話を頂戴しました。
リモートワークへの移行に伴い、全てのプロセスを可視化
現在弊社では、在宅勤務を前提とする職場環境の整備に伴い、全ての業務プロセスや組織のモチベーション、雰囲気、ストレスまで、数値化に取り組んでおります。
例えば、eNPSのスコアの分析結果からは、弊社は人間関係は良好である反面、社員個人のキャリア、評価に対する満足度が徐々に低下しているということがわかっていました。
この理由としては、リモートワークが長期化し、個人のキャリア志向の変化の把握や支援が行き届いていないことが考えられ、社員のモチベーション把握や本音の対話を、上司に丸投げするのではなく、組織的に支援する仕組みが必要と考えております。
また、より本音でコミュニケーションを取ることができる環境づくりの必要性を感じていたこと、また会社自体で新たな挑戦・施策を後押ししていくべきだと考え、個人の価値観の多様性に着目した、本音コミュニケーションの仕掛けとしてAttunedを導入したというのが経緯になります。
一人ひとりの価値観を引き出し、活かすためにAttunedを導入
実際のAttunedの活用のシーンとしては、上司と部下で1on1ミーティングを行う際、可視化されたそれぞれの価値観に基づいた、本音のコミュニケーションに取り組んでいます。
これは上司と部下との関係性における心理的安全性の確保にも繋がっているように思います。
業務のアサインや新しい配置を行うときにもモチベーターのデータを参考にしています。
具体的には、新しいビジネス・チャレンジングな機会には成長の欲求が高い社員を、お客様に多く対応する場合は利他性の高い社員を、事業計画を立てる際には堅実な見通しを立てるため安全性の欲求の高い社員を、といったようにメンバー配置の参考にしています。
このように、個人の価値観に沿った仕事ができる環境を整えることで、より積極的に仕事への意義を見出せる仕組みづくりに取り組んでいます。
また上司と部下の価値観が違う場合、どうコミュニケーションを取るべきかということに対してAttunedはヒントを出してくれるので、これも活用しながら1on1ミーティングを行っています。
上司部下の対話を一歩前に進めるコツ
セミナーの最後に、視聴者の方から頂戴した質問への応答を行いました。その中から一部をご紹介します。
Q: 上司への信頼感がないと本音を語るのは難しいと思いますが、信頼感の獲得のために工夫されている部分はあるのでしょうか。
佐村:私個人では、自分も常に本音を言う、着飾らない。自ら懐を全て開いて話すということを意識しています。
そうでなければやはり、「話しにくい、信頼ができない」という状態になってしまうと思うので、自分が感じたことを素直に伝えるよう心がけています。
小杉:やはりさらけ出すということは重要だと思います。
プライベートな話であっても、部下から無理やり引き出すとなると問題ですが、自分が伝える分には構わないわけです。そして自分が話すことによって部下が乗ってきてくれたら、関係性は確実に変わります。
Q: 自分がわからないことやできないことを部下に言ってしまうと、かえって信頼を失ってしまうのではと抵抗を覚えます。どのようにすればいいでしょうか。
小杉:そういった懸念も、思い切って伝えてしまった方が部下との関係は築きやすくなるのではないでしょうか。
また上司が情報を隠していることは部下からの不信感に繋がるので、仕事上の情報も可能な限り情報共有を行う努力を続けることが重要だと思います。
佐村:自分が仕事でどう感じたかということを、批判的にではなく前向きに伝えるようにしています。
辛いこともちろんあるのですが、その際はそういったネガティブな感情も伝えたうえで次のアクションを一緒に伝えるなど、可能な限り前向きに伝えることを意識しています。
登壇者紹介:
小杉 俊哉 氏
慶應義塾大学大学院 理工学研究科 特任教授, 合同会社THS経営組織研究所
早稲田大学法学部卒業後、NECに入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー、ユニデン人事総務部長、アップル人事総務本部長を歴任後、独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授などを経て現職。ふくおかフィナンシャルグループ・福岡銀行、エスペックなどの社外取締役を兼任。
佐村 俊幸 氏
NTT PCコミュニケーションズ 営業本部 戦略企画部長
1991年日本電信電話株式会社、1999年(NTT再編)NTTコミュニケーションズ株式会社入社(NTT再編)。西日本営業本部企画部門、ヒューマンリソース部労務厚生部門など、主に法人営業に関するマーケティングや企画人事業務に従事。 現在は株式会社NTT PCコミュニケーションズにてマーケティング、広報の責を担い、従業員エンゲージメント向上に積極的に取り組んでいる。
飯田 蔵土 氏
Attuned シニア セールスマネージャ
日本HPでSE(電子マネーに関するBizモデル特許取得)としてキャリアをスタートさせたのち、外資ファームでM&Aアドバイザー、戦略コンサル、外資メーカーで事業部長、管理本部本部長を経て、 2020年よりAttunedの事業責任者を務めている。一橋大学大学院修了。MBA in Finance。行動経済学会会員。