日本人のモチベーションは欧米人とは違うのか?データ分析の結果から

私たちは一般的に、世界の異なる国や地域には異なる文化があると考えています。このような文化の違いは、価値観の違いを反映していると考えてられているのも事実でしょう。

Attunedでは、全世界の回答者のモチベーター(モチベーションの価値観)のデータを保有しており、そのデータがモチベーターに関する人々の認識と一致しているかどうかを確認したいと考えていました。

3000人以上の回答者を日米欧で比較してみました。37,000行以上のデータ。私たちは、日本と欧米の従業員のモチベーターに文化が与える影響を理解しようと試みました。

これは、グローバルに展開する日本企業にとっても、日本で働く外国人にとっても重要な問いでしょう。日本の価値観が欧米の価値観と大きく異なることがわかった場合、異なる文化的背景を持つ従業員のモチベーションを高めるためには、異なる組織やチームマネジメントが必要になるかもしれません。

このことは、これから異文化チームを率いようとしている新任のマネージャーにとって、非常に貴重な情報であると感じました。

motivation difference Japan US EU

モチベーションの多様性は普遍的である

Attunedのデータは、日本人と欧米人の価値観に有意な差がないことを明確に示しています。内発的動機づけの原動力となる根底にある価値観において、統計的な有意差は、みられませんでした。

日本の社員は、欧米の社員と同じ価値観によるモチベーションを持っているように見えます。

ただし、これはすべての人が同じ価値観によるモチベーションを持っているという意味ではなく、実際には逆であり、個人の価値観のばらつきは国籍によって説明されないということだと理解できます。

唯一の有意な違いは、欧米の回答者は、意思決定の際に分析的でデータに基づいたアプローチを重視する傾向がやや高いことです。日本の回答者は、意思決定の際に他者の感情を考慮することを内発的に重視する傾向がやや高いのです。

動機づけのフェーズに用いられる自己決定理論

自己決定の度合いは動機づけの段階によって説明することができます。無動機づけや外部規制によった外発的動機づけにあたっては自己決定の度合いが低く、それに応じてモチベーションも低いです。それに対し内発的動機づけによって人は自己決定力が高くなり、モチベーションも高いといえます。モチベーションが低い状態から、指摘されなくても自発的に行動を起こす一連の流れを説明するために自己決定理論(Self-determination Theory)というコンセプトが大事になります。この理論はエドワード・デシとリチャード・ライアンというアメリカの心理学者によって提唱され、内発的動機づけの重要性を強調しています。内発的動機づけを高めるためには「自律性、有能性と関連性」の3つが満たされることがモチベーションの向上に繋がると記しています。この自己決定理論は人種や文化に影響されません。Attunedの11個のモチベーターの一つである自律性は男性回答者と女性回答者ともに2番目に高いモチベーターだとThe State of Motivation Report 2023によってわかっています。日本語回答者と英語回答者の平均スコアを比べても、さほど違いがないことがわかります。

パーソナライゼーションがモチベーションとマネジメントの鍵を握る

この発見は、バリー・ガーハート教授(ウィスコンシン大学マディソン校)とメイユ・ファン教授(台湾国立中央大学)の研究と一致しており、個人の価値観のばらつきの2~4%程度しか国の違いによって説明されません。(出典:こちらこちら

この発見は、グローバルに展開する企業にとって重要な意味を持ちます。習慣、コミュニケーション、行動の面で、文化の違いの重要性を過小評価するべきではありません。ただし、これらの文化の違いは必ずしも異なる価値観に起因するものではなく、少なくともモチベーションを高める価値観の個人差は「国」の違いよりもはるかに重要であるように思われます。

言い換えれば、企業やマネージャーは、同じ文化を持つ2人の個人を同じようにマネジメントできると思い込んではいけません。また、組織やチームのマネジメントにおいて、文化の違いを埋めることは不可能だと思い込んではいけません。 

国籍(または年齢や性別などの他の要因)に基づいて一般化するのではなく、経営者は、出身国に関係なくユニークな動機づけの価値観を持った個人として関わることを目指すべきです。


データは嘘をつかない

サンプルデータ:

内発的動機づけ要因の日本と欧米の反応の違い

内発的動機づけ要因の日本と欧米の反応の違い

参考:

https://en.wikipedia.org/wiki/Geert_Hofstede

National culture and human resource management: assumptions and evidence, Barry Gerhart & Meiyu Fang. https://bit.ly/2JvFO65

Trompenaars, F. and Hampden-Turner, C. 1997. Riding the Waves of Culture: Understanding Cultural Diversity in Business, 2nd edn. https://bit.ly/30gULj8

Understanding compensation practice variations across firms: The impact of national culture. Schuler, RS (Schuler, RS); Rogovsky, N (Rogovsky, N). https://bit.ly/2XWeRBO

Rethinking individualism and collectivism: evaluation of theoretical assumptions and meta-analyses. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11843547?dopt=Abstract

Hofstede's model of national cultural differences and their consequences: A triumph of faith - a failure of analysis. McSweeney, B. https://bit.ly/2RW3jZM

Hofstede, G. 2001. Culture's Consequences: Comparing Values, Behaviors, Institutions, and Organizations across Nations, 2nd edn. https://bit.ly/2RVElJQ