組織エンゲージメントを高める次の一手 〜個人と向き合う人材マネジメントへのデータ活用【セミナーレポート】

Attunedは、HRproが主催した「HRサミット2022」で行われた特別講演に協賛し、小杉俊哉氏(THS経営組織研究所 代表社員・BBT大学大学院客員教授・慶應義塾大学大学院講師)をゲストに迎え、ウェビナーを実施しました。

小杉先生には、近年の人材マネジメントの変遷と次世代リーダー育成を見据えた人材育成・組織開発、さらにエンゲージメントを可視化したその先の一手のポイントを伺いました。

本稿ではそのセミナーをAttunedインターンの藤田がレポートします。

 

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育成の主体の変化

人材育成のかつての主体は企業側で、人材は企業のニーズに当てはめていました。しかし今では、個人主導でキャリア形成を行い自己実現していくことが求められるようになっているように、企業とそこで働く個人の関係性が変化しています。このような中で企業側は研修や外部機関での経験の機会提供や、上司との1on1ミーティングなどを通じて、従業員との関係性つまりワークエンゲージメントを高める必要が出てきました。



従来型のマネジメントは、パフォーマンスマネジメントやプロセスマネジメントと呼ばれます。パフォーマンスマネジメントとは、目標管理・評価のプロセスであり、数値化可能な目標を設定します。一方、現場のマネージャーは全社の目標を自分の部門、チームに実行させる中継・管理役であり、プロセスマネジメントが中心となっています。



プロセスマネジメントとは、

・自部門が割り当てられた目標を各メンバーに割り振る

・その進捗を図るための指標を管理する

・自身もプレイングマネージャーとして目標達成のために活動

などの仕事を指します。



しかし、これは「外発的な目標」であり、本人が自律・主体的に考えて行動することを阻害し、エンゲージメントを低下させてしまいます。その中でアウトプット(収益)を確保しようとすると、インプット(労働時間)を増やすというメカニズムが働きますが、このような発想は、「働き方改革」が掲げられている現代の収益モデルに合いません。



マネジメント新時代には1on1が必須!

それでは社員のエンゲージメントを向上させるにはどうすればいいでしょうか?

現在、志向されているタレントマネジメントはピープルマネジメントと呼ばれています。


ピープルマネジメントの特徴は包括的であることです。マネージャーは全ての社員が才能を持つことを認め、彼らがその才能を発揮するために最適な機会となりうるポジションを与え、継続的に評価を行います。例えば、米企業のピープルマネジメントの潮流として、マネージャーがひとりひとりと向き合い、多様な強みを理解し、それを最大限引き出すというものがあります。


このように、約束した目標を達成するというコミットメントを求める乾いた関係から、エンゲージメントの向上を目指し、お互いに向き合うウェットな関係への移行が進んでいるのです。


特にミレニアル世代・Z世代がが過半数を占めれば、彼らにあったやり方にする必要があると考えられます。このような中では、

・リアルタイムフィードバック

・未来志向

・各社員のやりがいの把握

などが重視されます。



そしてここで必要になるのが、高い頻度の1on1ミーティングです!

今ではかつてのようにウォータフォール型で仕事を与え、管理するというやり方が向かない仕事が増えてきたと言われています。この変化に対応するためには、管理ではなく支援のもと、アジャイル仕事をやっていく必要があります。

社員を支援するには対話で一人一人と向き合うことが重要です。このような対話を通して社員の成長とパフォーマンス向上を支援することができます。




 
 
 


「社員が会社を辞めない」がエンゲージメント向上の目的?

次に、弊社Attunedシニア セールス マネージャー 飯田 蔵土より、ジョブクラフティングを用いた組織エンゲージメントの高め方について解説しました。



グローバル企業的な組織設計をとる会社が増える中で、会社を辞める人が増えていくと考えられ、会社側は社員の離職を防ぐためにエンゲージメントの向上を目指すという話があります。しかし、この目標設定で本当に良いのでしょうか?

実は、「辞めないけど、やる気はない」という社員も少なくないと言われています。例えば、日本では離職率はかなり低い一方、自分自身の仕事に熱意を持っている社員はほんの数%で諸外国に比べると圧倒的に低いとされます。

それでは、社員が離職しない「積極的な理由」を持つにはどうすれば良いでしょうか?


心理学者のDeci(1976) は、内発的に動機付けられた行動は有能さと自己決定の感覚を高め、さらには満足感を増加させると考えました。これを踏まえると、各個人の内発的動機に合わせた仕事を与えられるかが重要です。一方、会社は各社員のためにあるわけではなく、個人のための仕事のカスタマイズは不可能です。その中で自己決定的な感覚を持たせる方法がジョブクラフティングです。


ジョブクラフティングとは労働者が主体的に自らの仕事に対する認知(見方)を再定義し、創意工夫をすることで、よりやりがいを持って仕事に向き合えるという概念です。

例えば、マネージャーが部下に何か資格を取らせたいと考えたとします。「成長」がやりがいに感じる人には「この資格を取ることで、あなたは成長できる」と声をかけ、「利他性」がモチベーションになる人であれば「この資格は組織のためにもなる」と伝えれば、その個人に適したジョブ・クラフティングが可能になるでしょう。

 



このようなジョブ・クラフティングはひとりひとりの異なる内発的動機を理解することでやりやすくなります。

 
 

 




自律的なキャリア開発のメリット


次に、Attuned飯田と小杉先生による対談の模様をダイジェストでお伝えします。


飯田 マネージャーが個に向き合うと負担がかなり大きくなるという声も聞きます。これについて先生はいかがお考えですか?

小杉 リモートで1on1 ミーティングを取り入れている会社について、マネージャーの負担が大きくなったところと、かえって楽になったところの両方の声を聞きます。前者はマネージャーが全て管理していたため、顔が見えなくなったことで指示命令が出しにくくなったといいます。一方、後者はもともと支援していたということで、成果をあげるまでのプロセスの管理が不要なので、逆にやりやすくなり、生産性が上がったといいます。

飯田 直観的にはマネジメントコストが大変になると受け止めてしまいますが、実際には支援によって、今まで当たり前のようにかけていた管理、監視のコストが不要になる分リソースが生まれるのですね。

小杉 今まではプロセスの管理や個人のための目標設定がマネージャーの役割でしたので、個人が自分で何をやるかを考え、達成するためにマネージャーがサポートするという立場に変わるのは当然痛みを伴います。自分がそのように育てられてこなかった人にとっては大変だというのはよくわかります。

飯田 実際に大きな変化に取り組んで成功した事例はあるのでしょうか。

小杉 例えば、あるメーカーでは、管理職層に対して部下から不満がありました。そこで管理職層に対してアセスメントすると、やはり管理・達成志向は強い一方、ビジョン形成、リーダーシップの発揮、部下の育成・合意形成ということには彼らの関心がなかったんです。そこを変えるために彼らに対して研修をして、意識を変え、部下の一人一人と向き合い、サポートするという、「管理職層のリスキリング」をすることをマネージャー教育として投資しました。さらには昇格の条件として、部下の支援ができない者はどんなに売上数字を上げていてもマネージャーにしないという人事制度の変更を行ったことで、急速にそちらの方向へと変化していきました。

小杉 自律的なキャリア開発は、個人にとってどのようなメリットがあると思いますか?また、一人一人が自立した組織はどのようなものでしょう。まず、個人が自立主体的に動くと、その人たちとの新しい結合、イノベーション、新しいビジネスが生まれて、結局経営者が一番求めている収益の増加を実現できます。それでは個人にとってのデメリットはなんでしょう?

飯田 自分のキャリアを自分で考えるというのは大きな負担になると思います。



小杉 その通りだと思います。次に、組織にとってのデメリットとしては、会社の方向性が定まらない、マネージャーの負担が大きくなるということがあげられますね。さらには、みんな辞めてしまうのではないかという話も出てくるわけです。しかし、実際はそのような問題はなく、昔のスタイルの管理ができなくなるだけなんです。

一方、本当のデメリットはマネージャーのマインドセットを変えるための「トレーニング」です。あるいは個人も自分自身で何をやるべきか責任を持って考えないといけません。しかしこれらは短期的なコストです。

先ほどのメリットは個人にとっても組織にとっても中長期的です。短期的なデメリットを乗り越えた先に素晴らしい未来が待っているんです。それを個人にも組織にも突きつけられているというのが現状だと思います。

飯田 やはり「ここの会社にいる意味」を感じられると、自立した存在であってもそこの会社で働き続け、逆にその意味を感じられないと離職につながるのかなと思います。そう考えると、マネージャ自身の役割の一つは「この会社にいる理由」の発見の手助けになると思います。

小杉 まさにそうです。今その仕事をやっている「意味」ですとか、会社と個人のビジョンの接点を見つけるというようなことをやる必要があります。

飯田 上司のあり方、マネジメントのスタイルを変えなければならない、ということがエンゲージメントの次の一手となるのかなと思いました。

Attunedで社員のやりがいを見つけよう


みなさんは社員一人ひとりのやりがいが見えていますか?おそらく、普段の会話から個々のやりがいを理解するのは難しいでしょう。しかし、データとテクノロジーにより、一人ひとりの内発的動機を可視化できるのです。Attunedを活用していただくことで、1on1や部下の教育において自分と違う人のモチベーションを見える化し、一人一人に合ったジョブ・クラフティングができます。

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Masayuki FujitaComment