「心理的安全性」を育む優れたコーチングのためのTips
コーチングのトレーニングを受け始めた頃の私は、新しいツールやテクニックを学ぶことがコーチになるための重要な要素だと思っていたので、それらを学ぶことが楽しくて仕方ありませんでした。
しかし私はすぐに、その考え方が間違っていることに気づきます。
コーチングは、あなたのゴールの達成を支援する手段であり、それが機能しているときは会話のなかで自分自身に挑戦しているはずです。そのためには、コーチングを受ける側が安心でき「何を言っても安全である」と感じていなければなりません。
つまりどんなに優れた目標設定ツールや頭字語を使っても、信頼関係がなければ意味がないのです。
「信頼」と「心理的安全性」の違い
2019年に出版された『The Fearless Organization(邦題:恐れのない組織)』の中で、エイミー・エドモンドソンは心理的安全性と信頼を区別し、人は集団レベルで心理的安全性を経験すると強調しています。
心理的安全が存在しているチームのメンバーは、アイデアを共有したり意見を求めたりする場面においてだけでなく、意見が合わなかったり間違いを犯す場面においても他の人が自分に恩恵を与えてくれると信じることができます。
つまり、対人関係のリスクを取るのに十分安全だと感じる環境があるということです。
一方信頼とは「他の人や組織が約束したことを実行することを期待できるかどうか」 と定義されます。両者は密接に関連しているものの交換可能ではありません。
心理的安全性という概念はチームコーチングに適しているように思われるかもしれませんが、組織内で1対1で働くコーチはセッションというやり方を超えて個人的に安全な環境を作ることができます。またリーダーもチームメンバーも含めて、チームが心理的安全性を構築することの意味をより認識できるように支援することなども可能です。
ではどのようにして信頼関係を築くのでしょうか?
またコーチングの環境において心理的安全性を確保するとは、どういうことでしょうか?
「信頼関係の構築」という言葉はまるで非常に簡単であるかのようによく言及されますが、これを達成するためにはコーチはクライアントがミーティング中に心理的安全性を感じることができるように環境を整える必要があります。そのための一つの方法は「Fearless Organization Scan」で利用されている4つの側面とその手段、すなわち「リスクと失敗に対する態度」「オープンな会話」「助けを求める姿勢」「包括性と多様性」をコーチングセッションで実践することでしょう。
心理的安全性をコーチングに取り入れる4つのTips
信頼関係を築くことを目的に、心理的安全性の4つの側面をコーチングセッションに取り入れるための具体的なアイデアをいくつかご紹介します。
リスクと失敗に対する態度
これはコーチとして探求すべき特に重要なテーマだと言えるでしょう。個人レベルでは、グロースマインドセットの探求が非常にいい出発点となります。
クライアントの内発的動機を示すレポートについて議論することはクライアントの自己認識を深めるきっかけになります。またクライアント自身の結果とチームのメンバーのレポートを見比べ、それぞれやその違いにどう対処するのかを考えることで、「無評価」(non-judgment)を実践する機会にもなります。失敗を恐れる気持ちを正面から受け止め過去の失敗から何を学べるかを話し合うことで、行動を阻むような無意識の習慣に対処するのです。
WOOPのようなフレームワークを使えば、クライアントがプレモーテムを行う練習をすることができます。
プレモーテムとは起こりうる障害を特定し、それを克服するためのアイデアを事前に考えることです。最悪の事態を想定しそれを乗り越えることができると考えれば、また失敗をしても自分が処罰されることがないと思えば、失敗を恐れる気持ちを無くすことができます。
グループの環境に関しては、チームが失敗に対してどのように対応しているか聞いてみましょう。
失敗が否定的な印象と結びついているために、回避可能なリスクまでも避けてしまっていないか
そういった勇敢な試みを祝福するためにチームとしてできることは何か
どの程度のリスクを取ることが許容されるかを示すようなプロセスや方針があるか
オープンな会話
コーチの多くはセッションの中でパワフルな質問や対話を行っていますが、コーチングの対象者がより難しい会話に対応できるようになるまでには時間がかかるかもしれません。新しいツールを導入する前には、必ずコーチングを行う相手の許可を得るようにしましょう。これにより信頼関係を築き、クライアントがプロセスの中で発言権があると感じ続けられるようになります。またコーチングを受ける際には、守秘義務や倫理観、設計されたアライアンスについて明確に話し合うことで目線を揃えることができます。
また被指導者とのチーム環境を見てみるのもよいでしょう。上司や同僚との間で、デリケートな話題はどのように扱われているでしょうか。あなたがリーダーシップを発揮している人をコーチングしている場合、彼らが質問や懸念を口にする頻度は?
もしあなたのクライアントがこのようなタイプの会話をもっと意図的に起こしたいと思っているなら、マイケル・バンゲイ・スタニアの「The Coaching Habit」やブレネー・ブラウンの「Dare to Lead」などの本が良いきっかけになるでしょう。
サポートへの意志
利他性とそれがクライアントにとってどのような意味を持つかを議論することは、クライアントが職場で他人をサポートしようとする意欲について議論を始める一つの方法です。内発的動機は必ずしも行動と同じではないので、クライアントの利他性の動機が職場においてどのような形で他のメンバーへのサポートとなりうるのか、ぜひフラットに考えてみてください。
彼らが他者をサポートする方法を見つけられないとき、それは職場で経験している心理的安全性に加えて、彼らのエンゲージメントのレベルに起因する可能性があります。自分が同僚や顧客、地域社会に与えられる影響についてじっくり考えてみましょう。その際以下のような問いが有効かもしれません。
組織の大きな目標とのつながりをどの程度感じているか。
その目標を達成するために、自分はどのような役割を果たすことができるか。
困ったときには誰に頼めばいいのか。
それらの関係を深めるために、どのようなステップを踏みたいと考えているか。
またリーダーやマネージャーは、従業員がお互いに助け合うことを無意識のまま妨げるようなシステムにも注意しなければなりません。誤って同僚や顧客の利益と従業員を対立させ、心理的に安全ではない環境を作ってしまったインセンティブの例は多くあります。コーチはこのような場面において、客観性を要求しながらも明確さを生み出すGROWのようなモデルを使うことで、チームの現実と目標をより簡単に一致させることができるでしょう。
包括性と多様性
心理的安全性を確保するためには、社員が職場において自分自身であることを歓迎されていると感じる必要があります。個人レベルのコーチングでは、クライアントが限定的な信念を克服することや、自己評価を深めることに焦点を当てることなどです。
Attunedを使っているチームならば、メンバーが自分の一番のモチベーションを共有してその盲点を見つけたり、お互いをサポートする方法を考えたりするワークショップを行うと効果的です。
マネージャーが社員の気持ちを理解できるように、よく構成された360˚フィードバックプロセスを実施することを検討することも可能です。それらが上手くいったとしたら、成果の報告会では、現状とよりインクルーシブな企業文化のギャップを埋める必要性を広く知らせることができるでしょう。しかしそのためには、社員のマインドセットと行動の両方を大きく変える必要があります。
エドモンドソンはリーダーが自分の偏見を克服し、新しい視点を理解しようとするときに経験する困難を語っています。特に決断力や実際に起こっていることを知っていることがそれまでの成功に貢献してきた場合はなおさらです。アダム・グラントの著書『Think Again』は自分が知らないことを謙虚に考えることに焦点を当てているので、この問題に取り組むクライアントにとって非常にいい資料となるはずです。
コーチングセッションでは、会議で誰が最初に発言しそして最後に発言するか、チームにどれだけ頻繁にアイデアを求めているかなど、行動パターンに目を向けることをマネージャーに勧めます。
より多くの人を会話に参加させるためにはどのようなステップを踏めばよいのか。
偏りを最小限にしたり、より歓迎されたりするために、システムのどこを改善できるのか。
チームメンバーの習慣は自分たちが守りたい価値観を反映しているか。
もし反映されていなければ、状況を望ましい方向に導くために何ができるだろうか。
その心理的安全性は、部下の成長のために十分か
コーチングセッションでも職場でも、成長にはリスクがつきものです。しかし心理的安全性を伴う文化を育むことで、チームはそのパフォーマンスを向上させることができます。人々が困難な瞬間を乗り越えようとするためには、最終的に自分が安全であると感じられる必要があります。また特に混乱した状況にあるときには、努力する価値があると信じる必要もあるでしょう。
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