【リスキリング施策のポイント】DX時代のライフシフトの考え方
人生100年時代が到来し、ミドルシニアにおける『リスキリング』の必要性がいわれるようになり、日本政府も取り組みの音頭をとるようになってきましたが、実際には取り組みが不十分、または具体的な施策に落とし込めていない企業が多くあるのが現状ではないでしょうか。
本ウェビナーでは、職業性ストレスモデルを応用したストレスチェック サービス「PRAS」を開発する医療産業研究所 梅本 哲氏と人的資本経営がご専門の多摩大学大学院教授・ライフシフト大学理事長 徳岡晃一郎 氏をお迎えし、DX時代のライフシフトの考え方と『リスキリング』施策の促進にあたってのポイントを解説していただきました。その模様をAttunedインターンの高橋陸がサマリーをレポートします。
コロナ禍によってミドル・シニア世代のモチベーションが低下
はじめに、医療産業研究所 梅本 哲氏より、40代から50代の職場ストレスの現状/職場ストレス調査データの傾向から、基調講演として問題提起をいただきました。
まず、ライフシフトという大きな潮流の中で、企業のミドル・シニア世代のモチベーションが低下していることがデータからわかりました。ストレスチェックを2003年から実施してきましたが、モチベーションの低下の原因は色々と考えられますが、パンデミックによって加速しているというのも事実です。
ここで、有意味感(意味を見いだす力。有意味感が高ければ今やっている仕事に前向きに取り組むことができるようになる。詳しくは前回のセミナーレポートを参照。)を年代別に見てみると、年代が上がると有意味感の高い人が増える傾向にある、というのがこれまでの傾向でした。ただし、近年になってミドル・シニア世代でも特に50代の方の有意味感の低い人が増え、高い人は減少している、ということがデータでわかってきています。
本日は、この理由について、徳岡先生を交えて議論していきたいと考えています。
次に、人的資本が専門の多摩大学大学院教授徳岡晃一郎氏からDX時代に求められるライフシフトとリスキリング施策のポイントについて解説いただきました。
人生100年時代でマルチステージ型人生へ
平均寿命が毎年着実に右肩上がりで伸びています。長い人生の中でより一層仕事への向き合い方が重要視され、「長時間労働」から「長期間労働」へと変わっていっています。このマルチステージを生きるための変化をライフシフト(人生戦略をシフトする)と呼んでおり、この長い人生をどう有意義に過ごしていくかが求められているのです。
今後20年、30年と時代が変わっていく中で社会の一員として自分の価値をどう出せるかが大切であり、個人、その中でもミドル・シニア世代の一人ひとりが仕事に前向きに取り組み、人生を有意義なものにしていかなければ急激に進む人口減少にも対応できないでしょう。
2020年の50代以降の有効求人倍率は0.45と全体平均の1.18よりもかなり低く、リーマンショック時と同水準となっています。また、60代以降は正社員よりも非正規の雇用が多く、リスキリングをして社会で戦える武器を身につけることがより一層大切になってきています。
人生の成長戦略を立案する終身知創の時代へ
これまでは日々のビジネスの目標を達成する競争戦略を考え、今の会社の中で一生懸命働き、昇進していくスキルを磨いていけば良いというものでした。しかし、これからの時代には現在のキャリアに満足せず、先を見据えたライフシフトの準備をし、自己投資と自分をアップデートしていく必要性が高まっているのです。
このように、短期の視点から人生100年時代を見据えた長期の視点を持つことが重要になっているのです。この成長戦略を支える姿勢から「終身雇用」から「終身知創」の時代へと転換してきているのです。ただ雇われていればいいのではなく、自分で知を生み出していくことが必要なのです。
不確実性が高まる社会に必要なリスキリングとは?
会社の中の社員がより有意義に過ごし、人的資本経営を実現するために必要なリスキリングを2つに分けて紹介します。
デジタル(を活用する)リスキリング
デジタルリスキリングはもちろんですが、デジタルを活用していく力も大切です。特にミドルシニアはデジタルを使って世の中をよりよくしていくことが大切です。ここでは、デジタルワールドで生き残るための4Sを紹介します!
1 Scenario:時代認識に疎い。バックキャスティングや未来のビジョンを描けない。
→ビジョニング、時代認識を高める歴史・社会学・哲学の知見、ビジネスモデルリテラシー
2 Science:データや科学なしでは、合理的な判断や意思決定が出来ず、しがらみから抜け出せない
→データサイエンスマインド、論理思考、クリティカルシンキング、行動経済学
3 Speed:混沌とした時代では、ビジョンや価値観を明確にし、コミュニケーションを通じて人々の意識改革を促さないと何も変わらず漂流してしまう。
→リーダーシップ、コミュニケーション、チェンジマネジメント
4 Security:サプライチェーンリスク、知財リスク、地政学・経済安保リスク、サイバー攻撃リスク、人権・個人情報リスクなどを軽視してきた。
→ビジネスリスクリテラシー、ルール形成戦略、経済安全保障
ヒューマンリスキリング
デジタルだけでは分断を招く恐れがあるため、人が担わないといけない部分をヒューマンリスキリングといい、この人と人を繋ぐベースは共感力にあるのです。
この共感力をつけるためにコミュニケーションやEQ(感情指数)、LQ(愛情指数)、や人間力を高めていく必要があるのです。
最後に、視聴者からの質問を交えて、梅本氏、徳岡氏、弊社Attuend日本事業責任者の飯田による鼎談を行いました。
組織として層の厚いミドル・シニア層に向けてできること
飯田 リスキリングを個人が行うのはもちろんですが、ミドル・シニアを多く抱えている企業の組織としての課題もあると思うのですがどうなのでしょうか?
梅本 モチベーションが落ちている社員の方に期待を伝えることが必要だと思います。何をして欲しいかやどんな能力を身につけて欲しいかを伝えることが大切だと思います。
徳岡 人生100年時代で人々の活躍する年数が増えていく中でミドル・シニアをどうイノベーションに巻き込むのかを考える必要があると思います。若手との組み合わせやベテランじゃないとできないイノベーションは何かを考えることこそが人的資本経営につながると思います。
飯田 企業側としても意図を持って仕事をアサインし、どんな役割を期待しているかを言語化することが求められるということですよね。
徳岡 そうですね。ベテランになってくると人生の目的や動機がバラけてくるので内発的動機を確認しながら仕事をしたり、最適な目標を設定していくケアを組織から進めていく必要があると思います。
デジタルの文脈から世界が劇的に変わる中での動機づけのアプローチ
飯田 DXやデジタルという文脈から世界が目まぐるしく変わる中でどのように動機づけのアプローチをとれば良いでしょうか?
梅本 内発的動機がとにかく大切で、まさにAttunedの出番だと思います。内発的動機をできるだけはっきりさせ、共有することがおもしろいと思います。
徳岡 同じ領域でもう一踏ん張りするのはすごく大変なので、視点を変えることが重要だと思います。その上で私がライフシフト大学をやる中で気づいた3つの視点があると思います。1つ目は自分のためから人のために働きたいと変わっていく。2つ目は会社の仕事ばかりでなく、自分の人生のためにやることに変わっていく。3つ目は会社の中だけで考えるのではなく、社外の友人や地域の人など広い視野を持つことができるように変わっていくので狭い世界ではなく、外の世界を見ることは大切だと思います。
2023年に『リスキリング超入門 DXより重要なビジネスパーソンの「戦略的学び直し」 』をKADOKAWAより出版します。より詳細に解説していますので、あわせてご覧ください。
内発的動機を利用してリスキリングの第一歩を踏み出してみませんか?
Attunedでは、心理学者とデータサイエンティストのチームが、仕事に関係する内発的動機づけを洗い出し、クラスター化と検証を経て 11 個に絞り込み、それらの11の内発的動機のことを、動機づけるモノ・コトという意味で「モチベーター」と呼んでいます。
さらに、55の質問からなるモチベーションアセスメントを受けていただくことで、個人にとってどのモチベーターが最も重要なのか、どのような仕事で最高のパフォーマンスを発揮するのか、どのような環境で最も活躍する可能性が高いのかを示すモチベーター レポートを提供しています。
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登壇者略歴
徳岡 晃一郎 ライフシフト大学 理事長・多摩大学大学院 教授
日産自動車人事部、欧州日産を経て、1999年よりコミュニケーションコンサルティングでは世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人のSVP/パートナー(株)ライフシフトCEO。人事制度、風土改革、社内コミュニケーション、レピュテーションマネジメント、リーダーシップ開発などに従事。2006年より多摩大学大学院を兼務。著書に『MBB:思いのマネジメント』(野中郁次郎教授、一條和生教授との共著)、『イノベーターシップ』など多数。東京大学教養学部国際関係論卒。英国オックスフォード大学ビジネスマネジメント修了(経営管理学修士)
2023年に『リスキリング超入門 DXより重要なビジネスパーソンの「戦略的学び直し」 』をKADOKAWAより出版。
梅本 哲 株式会社 医療産業研究所 代表取締役社長
1986年 医療分野における調査・コンサルティングに特化した専門企業として、医療産業研究所を設立。以来35年にわたり、中央官庁、地方自治体、公益法人、大学等教育機関、官民研究機関、医療機関・団体、民間企業等、幅広いクライアントから、保健・医療・福祉に関する多様なテーマでの調査依頼を受託。
2003年 筑波大学と産学協同で開発したストレスチェックツール(PRAS)を基軸に、メンタルヘルス事業へ参入。2015年 ストレスチェック義務化を経て現在に至る。
飯田 蔵土
Attuned シニア セールス マネージャ
日本HPでSE(電子マネーに関するBizモデル特許取得)としてキャリアをスタートさせたのち、外資ファームでM&Aアドバイザー、戦略コンサル、外資メーカーで事業部長、管理本部本部長を経て、 2020年よりAttunedの事業責任者を務めている。一橋大学大学院修了。MBA in Finance。行動経済学会会員。