心理的安全性とは? – 職場への効果や今日から実践可能な4つの方法
心理的安全性の高い環境を確立することは、現代の企業にとって重要さを増してきています。これは生産性の向上、離職率の低下、従業員のウェルビーイングの向上などにつながります。しかし、日本企業にはこの点が欠けていると言われることが多々あります。なぜでしょうか?そして、どうすればいいのでしょうか。ここでは心理的安全性を高める方法を紹介します。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、所属する組織において、それぞれの違いが信頼・尊重されていて、新しいアイデアや質問、懸念を率直に話せると感じている心理状態を指します。さらにそうすることに義務感を持っている状態を含みます。心理的安全性を提唱したハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は、心理的安全性を「社員が共通の目標に集中し、自己防衛や非難にエネルギーを費やすことをやめるよう促すもの」と説明しています。
チームのメンバーが心理的安全性をどの程度感じられるかは、おもにチーム内の環境によって決まると言われています。同じ従業員でも、あるチームでは「安全だ」と感じても、別のチームでは「安全でない」と感じるということがあり得るのです。チームでの心理的安全性の感じ方に影響を与えるのは、リーダーだけではありません。チームメンバー全員の行動と態度です。
つまり自分が対人的なリスクを伴う行動をとったときに、他のメンバーがどのような反応を示すかという自分自身の期待こそが、そのチームがどの程度「安全だ」と感じるかを決定するのです。
Attunedは対人的リスクを伴う行動を以下の6つとしています。
・知識を共有する
・ミスを報告する
・自己表現する
・意思決定を行う
・反対的な行動を取る
・意見を表明する
心理的安全性は、このような危機感や恐怖感を取り除くことに機能します。ームの心理的安全性が高い場合、従業員は自分の意見やアイデアを共有したり、他人の間違いを指摘したりすることに対して恐れや不安を感じません。実際、心理的安全性の高いチームでは、従業員は、アイデアを共有したり他人の仕事の問題を指摘した場合に、仲間が感謝したり報酬を与えたりすると期待しています。
したがって、心理的安全性は、メンバーが行動を起こすための意欲を引き出し、パフォーマンスを向上することができるのです。
従業員はリスクを最小限に抑える戦略を練るのではなく、貴重な時間とエネルギーを生産的なタスクに割り当てることができることで、認知機能を低下させる感情を減少させ、仕事を評価され、活力を感じることができます。
心理的安全性にまつわる7つのよくある誤解
しかし、「安全性」という言葉からか、誤った認識も多く生まれているようです。社内に「心理的安全性=ぬるま湯の職場、攻撃的な言動が許容される」といった誤った文化が生まれることを防ぐために、社員に正しい理解を広めることが必要です。
① 心理的安全性は無責任な態度を奨励する
この誤解は、心理的安全性が「何をやっても許される」と解釈する方によく見られます。心理的安全性は失敗や問題に対処する環境を整え、オープンな議論を可能にします。失敗を恐れない代わり、「なぜ問題が生じたのか、次回はどうすれば改善できるか」と起きた失敗を次回以降に回避する方法について、強い責任を持って徹底的に追及する文化を築くことが大切です。
② 心理的安全性は「優しさ」を指す
心理的安全性は、お互いに親しい友達であることとは異なります。実際、あまりにも仲の良い組織は、過度な気を使い、厳しい問題の議論を避ける風潮を生むことがあります。Googleの調査によれば、あまりにも友好的な雰囲気は、逆に率直な議論を妨げることがあります。心理的安全性は、対立的な意見にも耳を傾け、困難な問題にも立ち向かうための環境を提供するものです。
③ 心理的安全性により同調圧力が高まる
このような誤解をしている方々は、おそらく心理的安全性を「仲のよさ」といった概念に置き換えているのでしょう。心理的安全性は、個人が自分の意見や懸念を自由に表明できる環境を促進します。これによって、集団思考や確証バイアス(自分の意見を支持する意見のみに意識が行くこと)を防ぎ、よりバランスの取れた意思決定を可能にします。心理的安全性は、個人の声を尊重し、異なる視点を受け入れる文化を育む手助けをします。
④ 心理的安全性のためには困難な対話を避なければならない
心理的安全性があるからこそ、難しい対話を進めることができるのです。心理的安全性が高い組織では、リスクを取って新しいアイデアを出し合ったり、問題点や懸念を正直に共有したりするのに最適な環境があります。心理的安全性がなければ、真摯な対話がおざなりにされ、問題を放置することが増えてしまいます。
⑤ 心理的安全性の生産はボトムアップ式である
リーダーが自身の役割を果たさない限り、組織全体で心理的安全性を確立することは難しいと言えます。リーダーの役割は、積極的に心理的安全性を支持し、自身が模範となることです。例えば、プロジェクト会議で異なる視点を尊重し、議論を奨励することが、心理的安全性を向上させます。心理的安全性を築くにはリーダーの協力が不可欠ですが、それだけではありません。個々のメンバーも積極的に協力し、オープンで建設的な対話を実践することも重要です。互いに率直に意見を交わす。出てきた意見や質問に対してその相手を軽蔑したり、人格に対して否定的な態度をとらない。失敗に対して罰せられるのではなく、学びの機会として受け入れる姿勢を示す。これらの積み重ねにより尊重と信頼の文化が醸成され、組織の心理的安全性が確立されていきます。
⑥ 心理的安全性の高い組織では誹謗中傷や攻撃も歓迎される
誹謗中傷や攻撃行為は、心理的安全性の反対です。心理的安全性は、リスクを冒して新しいアイデアを出すことや、自分の意見を表明することに対して、貶められたり罰せられたりする不安を軽減する状態を指します。誹謗中傷や攻撃行為が許容される文化は、組織全体の健全な成長や協調作業を阻害する可能性が高いです。
⑦ 心理的安全性は各個人の問題である
心理的安全性の程度は、所属するチームや組織に依存します。同じ人物であっても、組織やチームが異なれば、心理的安全性は異なります。これは心理的安全性に関する学術研究によって明らかにされています。心理的安全性は、要するに「その人が、一緒に仕事をするチームで感じている心理的安全性の程度」なのです。
心理的安全性をもたらすための4因子
また、日本の人事部「HRアワード2021」書籍部門 優秀賞受賞などを果たした「心理的安全性のつくりかた」(石井遼介著、日本能率協会マネジメントセンター, 2020)によると、日本において心理的安全性が満たされている会社には、
・話しやすさ
・助け合い
・挑戦
・新奇歓迎
という4つの因子があり、心理的安全性の達成にはこの4つの因子が必要だと考えられます。
この4因子を満たすには?
このような4因子を達成する方法は、「どの段階にアプローチするか」によって異なります。ここでいう段階とは、「行動・スキル」、「関係性・カルチャー」、「構造・環境」の3つをさします。
1.行動・スキル:
個々人の行動・スキルを指します。最も変化を起こしやすいのがこの段階です。
2. 関係性・カルチャー:
上記のような「行動」の継続の結果、チームの人々が学習した、チームとしての習慣や行動パターンを指します。ある行動を続けていくうちに、それが組織文化として染み付いていくイメージです。
3. 構造・環境:
会社や事業の仕組み自体に起因する構造的な問題を指します。このような構造・環境自体は変えにくいので、あくまでも「前提」として考える必要があります。
「心理的安全性のつくりかた」の焦点は2の「関係性・カルチャー」レベルでチームの心理的安全性をもたらすことにあります。
4つの要素を行動に分解
先ほど述べた4つの因子は行動に分解できます。これらの行動をとることによって4つの因子を達成し、結果的に心理的安全性を高めるのです。
・話しやすさ
話す、聞く、相槌を打つ、報告する、目を見て報告を聞く、雑談する、「報告」という行動自体を褒める
・助け合い
相談する、相談に乗る、問題を見つける、助けが必要だと認める、ピンチをチャンスへかえるアイデアを出し合う、個人ではなくチームの成果を考える。
・挑戦
挑戦する、機会をつくる、模索する、仮説検証、工夫する、新しいことをする、挑戦自体を褒め歓迎する、失敗を歓迎する、現実のフィードバックを受け入れる、常識を疑う
・新奇歓迎
個性を発揮・歓迎する、強みに応じて役割を与える(適切な配置をする)、常識に固執しない、ステレオタイプを避け本人の行動を見る、批判を一時脇に置く、違いを良い悪いではなく、ただ違いとして認める。
先ほど述べたように関係性やカルチャーは行動の積み重ねの結果です。そのため、心理的安全性をもたらすには、一つ一つの行動を変える必要があります。
ここで、逆によくない行動が心理的「非」安全な職場にしてしまう例をみてみましょう。
例1) ミス発生時に犯人探しをする
この場合、萎縮してチャレンジできなくなってしまうことが予想されます。
例2) ちょっとした思いつきを発言すると上司に冷たく反論された同僚を見た。
この場合は、自分も同僚と同じ目に合わないように発言を控えてしまうのではないでしょうか。
これらは不安や罰として機能しています。日々のメンバー同士の発言や行動、それらに対応する人々の様子を、チームの中で学習してしまっている状態といえるでしょう。
心理的「柔軟性」を用いた改善策
それでは、心理的安全性を職場にもたらすためにどのようにして行動を変えれば良いのでしょうか? この本では、行動の変革の基盤になるものとして、「心理的柔軟性」を挙げています。
心理的柔軟性とは「状況、立場、文脈」に応じて、とっている行動をより役に立つように切り替えられるしなやかさのことです。
心理的柔軟性を身につけるには?
この本では、心理的柔軟性とは以下の3つのような行動パターンを取れることを指します。
必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる
大切なことに向かい、変えられるものに取り組む
それら変えられないものと、変えられるものをマインドフルに見分ける
1:必要な困難に直面し、変えられないものを受け入れる
・困難な思考や感情に対してオープンである、とらわれない、という意味です。
具体的には、ミス、クレーム、トラブルが起きてもやるべきことを前向きにやる、ということをさします。困難にとらわれないことで現実の問題を直視し、正しく理解、改善できるようになります。
では、どのようにすれば困難に対してオープンになれるのでしょうか?
A:「思考=現実」( 思考と現実が混ざり合い区別がついていない状態)から脱出する
ここでいう思考は、頭の中に色々浮かんでくる言葉、音声、イメージを指します。
そのような思考と現実を同一視する、つまり主観的な感じ方や見え方を現実だと思い込んでしまうのは問題です。
解決策としては、「思考=現実」(思考に捉えわれていること)に気付くことが挙げられます。
筆者は自分が思考にとらわれていることに気づくチャンスとして、困難の原因となる相手(ミスをしたチームメイト、理不尽なクレーマーなど)を全否定しようとしているときを挙げています。
つい相手の全てを否定したくなるときも、実際は「その人の、その瞬間の行動や、判断がおかしい」に過ぎないのです。これを頭に入れていれば、相手を全否定したくなる時に、「でも、そんな相手にも合理的な部分はないかな」、「相手の立場からするとついそのような反応をしてしまったのかな」といった「あるかもしれない、他の可能性」について想像することができます。こうすることで自分自身の頭の中の考えにとらわれずにすみます。
B 嫌な気持ちを、コントロールするのではなく受け入れる
ネガティブな思考や感情などは回避したり、コントロールしようしてしまいがちです。
例えば、
「失敗について考えることを避けようとし、必要なリスクの検討ができない」
「クレームやフィードバックから学ぶのではなくやり過ごそうとする」
ことがあります。
しかし、このような状態だと顧客への価値想像やメンバーの成長支援よりも、嫌な気持ちへの対処の方に時間とエネルギーを使ってしまいます。
この問題は、「嫌な気持ちのコントロールを諦め、受け入れる」ことで乗り越えられます。
「受け入れる」とは、ネガティブな思考や感情、記憶に対してオープンになり、それを自ら進んで味わうことを意味します。
このように、「あっさりした」態度をもつことにより、思考を思考として、感情を感情として分別できるようになり、現実を正しく捉えることを妨げられないようになります。
筆者は、「仕事をしている上でトラブルは起きる。特に正解のない時代において、トラブルや予想外が起きることは、単なるビジネスの前提に過ぎない。それを楽しもう」
というようなスタンスでいることが大切だといいます。
2:大切なことに向かい、変えられるものに取り組む
これは個人、チームとして向かいたい方法や大切にしていることにエンゲージ(従事)して行動に移しているということです。
「大切なこと」を、組織としてのビジョン、ミッション、チームとしての仕事の意義・目標として明確化・言語化することがポイントです。
これらの意義目標と個人の大切なこと、向かいたい方向、やり続けたい行動の繋がりが整うことで、例え困難があったとしても行動を促し、仕事に意味づけすることができます。
3:変えられないものと、変えられるものをマインドフルに見分ける
「マインドフル」とは気づきに満ちている状態のことです。ある瞬間、ある状況において「どの大切なことを、今大切にするとよいか」に意識的であることを意味します。また「変えられるもの」とは、行動のような意識によって制御できるもののことです。
マインドフルな気づきが不足している時、「心ここに在らず・上の空」といった状態になります。そのような状態のとき、「目の前で進行中の出来事に集中し、体験する」代わりに頭の中の「思考」や「感情の渦」に囚われてしまいます。例えば、1on1をしている時、その後の役員への報告会が気になっているようだと、せっかくの1on1の機会を有意義に活用できません。
これを脱する方法の一つに、「物語としての私」から「観察者としての私」への転換があります。
「物語としての私」は「自分らしさ」や「キャラ」に沿った形の自己を指します。その問題点は、「自分らしさ」や「キャラ」を守るために役に立たない行動を取ったり、チャンスでも行動を変えなかったりすることです。
「自分らしさ」に固執してしまうと、それが損なわれるような場面に遭遇した時に不安を感じ、成果を出すための仕事よりも、弱さを隠す仕事に従事しようとしてしまいます。これは「助けてもらう」という行動が取れていない、心理的柔軟性がない状態です。
一方、「観察者としての私」とは、自分の思考や感情を他人のものであるかのように、距離をとって観察できることを指します。これにより「これは私のキャラではない」などという、自分自身を制約する思考から自由でいられます。そのため、何か失敗した時も「自分自身が損なわれる感覚」(自己効力感・肯定感が損なわれる感覚)がありません。このような状態になれば、予期せぬ出来事が起きた場合も冷静でいられるので、行動の選択肢、つまり柔軟性が増えるのです。
心理的安全性の構築には健全なコンフリクトや、厳しいが前向きなフィードバックは欠かせません。これに対してネガティブでいると、思考は非柔軟になってしまいます。そこで「観察者としての私」になることで適切な判断行動を取る必要があるのです。
「きっかけ」と「見返り」で行動を促す
この章では筆者は人間の行動の動物的側面に注目し、行動分析という概念によって心理的安全性を高めることを紹介しています。
行動分析の基本的かつ重要なフレームワークは
きっかけ → 行動 → 見返り
というものです。
きっかけが行動を引き出し、うれしい見返りがあれば次回同じようなきっかけがあった時にその行動をとる確率が上がります。一方で、見返りがなかったり、好ましくないとその行動をとる頻度が低くなります。つまり、どのようなきっかけや見返りがあるかによって各行動が増えるか減るかが左右されるのです。
それでは、行動分析を利用して自分の行動を変えるために具体的にはどのようにすれば良いでしょうか?
心理的安全性を高める4つの因子それぞれの改善方法について見てみましょう。
・話しやすさ
例えば「報告のしやすさ」を改善するにはどうしたら良いでしょうか
〜わかりにくい報告を受けたとき〜
例えば、「部下が報告してきたが、その説明がわかりにくい」という状況を考えてみましょう。
その時に頭ごなしに「あなたの報告はわかりにくい」と非難するのではなく、まずは「報告ありがとう」と言いましょう。「報告する」という行動自体を歓迎することでポジティブな見返りを与えると、「報告」という行動を今後も促すことができます。逆に否定してしまうと、部下からすると報告するのがおっくうになってしまいます。報告の内容について改善点を指摘するのは感謝を述べた後です。
〜「何でも言ってね」は役に立たない〜
「何でも言ってね」と部下に言っても、実際に意見するのは気が引けてしまいがちです。そこで「企画を改善するにはどうすればいいと思う?」や「担当する上で不安なことを教えてください」などと、具体的な問いかけをすることは相手が意見を言うきっかけになります。
・助け合い
部下が「助けを求める」という行動をしやすくするには、「話しやすさ」の場合と同じように「きっかけ」となる質問をすることが有効です。「困っていることはある?」、「手が止まったら教えてね」といった声かけにより「助けを求める」という行動を引き出しやすくなります。
・挑戦
挑戦を促すようなきっかけにはどのようなものがあるでしょう?
〜範囲を限定し、工夫・改善を依頼する〜
「なんでもいいから面白いアイデア」を募ってもなかなかアイデアは生まれません。そこで、「今あるこの問題を解決するにはどうしたらいいか」というように具体的な問題に絞ってアイデア創出を目指すことが大切です。
また挑戦に対して、「できない理由、リスクを並べる」といったネガティブな見返りを与えると挑戦が妨げられます。一方で挑戦自体を褒めたり、その人が孤独に挑戦することのないよう、結果の振り返りを一緒にしたり、その人の挑戦を組織内に周知したりすることは心理的安全性を高める有効な見返りです。
・新奇歓迎
社員の個性を発揮させる方が業績がよくなることを示唆する事例が多くあります。
このような利点を持つ個性を発揮させるには、「上司のいうことが絶対」といったり「常識で考えろ」というような風潮にみられるようなネガティブな状態をなくすことがまず重要です。
その上で個性を生かせるような配置を組織内で行うことで新奇歓迎という心理的安全性の因子が達成されます。
言葉で行動を強化する
言葉は先ほどの行動分析とは異なり、実際に体験することなく、適切な行動を学習することを可能にします。つまり、個人の体験学習を言語化しチーム全体に共有することができるのです。
行動分析での見返りはすぐに与えられる短期的なものであったのに対し、言葉は未来の、長期的な見返りに向かって努力することを可能にします。このように言葉によって未来の見返りを把握し、行動をコントロールする能力を「ルール支配行動」といいます。
ルール支配行動は以下の3つに分けることができます
ルール通り、言われた通りの行動(以下:言われた通り行動)
ルールに従うことで得られる見返りによってとる行動(以下:確かにそうやな行動)
言葉によって見返りの強さが変わる行動(そんな気してきた行動)
それでは上記の行動についてみてみましょう。なお、それぞれの行動の名前ではなくどのように分類されているか理解することが大切です。
言われた通り行動
この行動は成果が出るまで時間がかかる仕事には有効です。しかし、「行動そのもの」からの見返りを手にしているのではなく、ルールを提示した人が与えてくれる見返りの方を重視している状態でもあります。このようなルール支配行動はチームの顔色を見て罰と不安を感じる、心理的「非」安全な状態に繋がりやすいです。ルールに従うだけで満足してしまうと、心理的柔軟性に欠けた、実際のところは役に立たない行動を取り続けてしまいかねません。
確かにそうやな行動
これはルール通りの行動をとるものの「行動そのもの」からの見返りを実感できている点で「言われた通り行動」とは異なります。この行動の利点は、見返りが得られない場合にルールが間違っていることに気づき、別の行動を柔軟にとることができることです。
筆者は職場にある「不十分な仕事」の多くが、「確かにそうやな行動」ではなく「言われた通り行動」の結果であることを指摘しています。ルールを提示する側が、なぜこのようなルールが必要なのか説明し、ルールに従うことで得られる見返りを言語化することで、「言われた通り」から「確かにそうやな」という行動を促すことができます。
大切なことは「これがルールだからつべこべ言わずに従って」というのでなく、「きっかけ(ここではそのルールの活用場面)」と「見返り(ルールに沿った結果得られるもの)」が何かを伝えることです。
そんな気してきた行動
「行動自体から見返りを得ている状態」と、「上司からの声かけ」が組み合わさって大きな見返りが得られるとき、「そんな気してきた行動」が取れているといえます。あなたが好きで取り組んでいる仕事を思い出してみてください。その仕事にはすでに「喜び」や「やりがい」といった見返りがあります。それに加えて上司から「あなたの仕事はこのチームにとって大事です」と言われれば、よりやりがいを感じ、見返りの力が大きくなることがわかるでしょう。