【「個の時代」のHR経営 第2回】”心理的安全性=優しさ”ではない!?多くの人が陥る「心理的安全性」に関する誤解

皆さま、こんにちは。このシリーズでは、定期的に戦略人事に求められる視点をお届けいたします。担当は、Attuned日本事業部長の飯田蔵土です。現職に至るまで、過去にアクセンチュアなどのコンサルティングファームでの経験を積みながら、金融工学や人的資本経営の分野で幅広い知識を培ってまいりました。

人的資本情報の開示の義務化が2023年にスタートし、心理的安全性に対する関心は急速に高まっています。弊社にもここ数カ月、連日のように心理的安全性に関する問い合わせが寄せられ、その重要性がますます浸透していることを実感しています。しかし、「安全性」という言葉からか、誤った認識も多く生まれているようです。そこで第2回は、心理的安全性の正確な理解を促進するために、よくある誤解について解説してみたいと思います。

心理的安全性について再確認しましょう

心理的安全性とは、所属する組織において、違いが信頼・尊重されていて、新しいアイデアや質問、懸念を率直に話せると感じている心理状態を指します。さらにそうすることに義務感を持っている状態を含みます。心理的安産性を提唱したハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は、心理的安全性を「社員が共通の目標に集中し、自己防衛や非難にエネルギーを費やすことをやめるよう促すもの」と説明しています。この概念はGoogle社の研究でも実証されています。この研究では、心理的安全性が組織における生産性の向上に価値をもたらすことが明らかになりました。

 
 

7つのよくある誤解

① 心理的安全性は無責任な態度を奨励する

この誤解は、心理的安全性が「何をやっても許される」と解釈する方によく見られます。心理的安全性は失敗や問題に対処する環境を整え、オープンな議論を可能にします。失敗を恐れない代わり、「なぜ問題が生じたのか、次回はどうすれば改善できるか」と起きた失敗を次回以降に回避する方法について、強い責任を持って徹底的に追及する文化を築くことが大切です。

② 心理的安全性は「優しさ」を指す

心理的安全性は、お互いに親しい友達であることとは異なります。実際、あまりにも仲の良い組織は、過度な気を使い、厳しい問題の議論を避ける風潮を生むことがあります。Googleの調査によれば、あまりにも友好的な雰囲気は、逆に率直な議論を妨げることがあります。心理的安全性は、対立的な意見にも耳を傾け、困難な問題にも立ち向かうための環境を提供するものです。

③ 心理的安全性により同調圧力が高まる

このような誤解をしている方々は、おそらく心理的安全性を「仲のよさ」といった概念に置き換えているのでしょう。心理的安全性は、個人が自分の意見や懸念を自由に表明できる環境を促進します。これによって、集団思考や確証バイアス(自分の意見を支持する意見のみに意識が行くこと)を防ぎ、よりバランスの取れた意思決定を可能にします。心理的安全性は、個人の声を尊重し、異なる視点を受け入れる文化を育む手助けをします。

④ 心理的安全性のためには困難な対話を避なければならない

心理的安全性があるからこそ、難しい対話を進めることができるのです。心理的安全性が高い組織では、リスクを取って新しいアイデアを出し合ったり、問題点や懸念を正直に共有したりするのに最適な環境があります。心理的安全性がなければ、真摯な対話がおざなりにされ、問題を放置することが増えてしまいます。

 
 

⑤ 心理的安全性の生産はボトムアップ式である

リーダーが自身の役割を果たさない限り、組織全体で心理的安全性を確立することは難しいと言えます。リーダーの役割は、積極的に心理的安全性を支持し、自身が模範となることです。例えば、プロジェクト会議で異なる視点を尊重し、議論を奨励することが、心理的安全性を向上させます。心理的安全性を築くにはリーダーの協力が不可欠ですが、それだけではありません。個々のメンバーも積極的に協力し、オープンで建設的な対話を実践することも重要です。互いに率直に意見を交わす。出てきた意見や質問に対してその相手を軽蔑したり、人格に対して否定的な態度をとらない。失敗に対して罰せられるのではなく、学びの機会として受け入れる姿勢を示す。これらの積み重ねにより尊重と信頼の文化が醸成され、組織の心理的安全性が確立されていきます。

⑥ 心理的安全性の高い組織では誹謗中傷や攻撃も歓迎される

誹謗中傷や攻撃行為は、心理的安全性の反対です。心理的安全性は、リスクを冒して新しいアイデアを出すことや、自分の意見を表明することに対して、貶められたり罰せられたりする不安を軽減する状態を指します。誹謗中傷や攻撃行為が許容される文化は、組織全体の健全な成長や協調作業を阻害する可能性が高いです。

⑦ 心理的安全性は各個人の問題である

心理的安全性の程度は、所属するチームや組織に依存します。同じ人物であっても、組織やチームが異なれば、心理的安全性は異なります。これは心理的安全性に関する学術研究によって明らかにされています。心理的安全性は、要するに「その人が、一緒に仕事をするチームで感じている心理的安全性の程度」なのです。


まとめ

心理的安全性の誤解を解消することで、同時に心理的安全性への認識がより明確になったのではないでしょうか。誤解が広まり「心理的安全性=攻撃的な言動が許容される」といった誤った文化が生まれることを防ぐために、社員に正しい理解を広めることが必要です。また、心理的安全性を向上させるための取り組みは、全社的な啓蒙活動と現場での実施が必要です。


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著者/飯田蔵土

EQIQ株式会社Attuned事業部営業責任者

外資系メーカー事業部長、管理本部長、コンサルティングファームM&Aアドバイザリーなどを経て現職。一橋大学大学院国際企業戦略研究科修了(MBA in Finance)

行動経済学会会員