集中力を持続させることで人生を変える方法

『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール 』と『最強の集中力 本当にやりたいことに没頭する技術』の著者、ニール・イヤール氏との対談。

ベストセラー『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール 』『最強の集中力 本当にやりたいことに没頭する技術』の著者、ニール・イヤール氏は、投資家でもあり、Attunedを含む世界中の様々なテック企業のコンサルタントとして活躍しています。

科学ジャーナリストでAttunedライターフェローシップを受賞したタニア・ラベサンドラタナとのインタビューで、ニール・イヤール氏は生産性と時間管理に対してそもそもなぜ気が散ってしまうのかに焦点を当てることの重要性と共に、自分にとって本当にやりたいことに没頭する技術について話しています。

まず、基本的なことから始めましょう。あなたにとって、「気が散らない」とはどういう意味ですか?

ニール・イヤール氏:気が散らないようにすることは、他人と同じように自分に対しても正直であるということです。運動する、正しい食事をする、家族と一緒にいる、仕事で大きなプロジェクトを終わらせる、お金を貯めるなど、自分がやると言ったことを実行するために努力することです。

気が散りやすいは人々は、人生を後悔しながら生きています。彼らは、「なぜ、ビジネスを前進させるのに役立たないことに取り組んでいたのだろう?」「愛する人と一緒にいるよりも、ドラマやテレビ、フェイスブックにばかり気をとられて、子どもたちと十分に向き合えなかったのはなぜだろう?」と振り返ります。

メディアは、「ニュースはもういい」「Netflixはもういい」「Facebookはもういい」とは決して言いません。彼らの関心は、あなたを夢中にさせることです。そして、私はあなたを夢中にさせる方法を知っています。私はそのハマるしかけについての本を書きました!さらに、私は、彼らのコツやトリックをすべて知っています。私は、良いものとそうでないものを伝えることができます。私たちには、自分の時間と注意を取り戻す能力があるのです。

わざと異論を唱えるとするのなら、気が散らないために近づきやすく、利用しやすく、柔軟であることはどうでしょうか?

作家、投資家、コンサルタントも務めるニール・イヤール氏

ニール・イヤール氏: 私は、仕事仲間や子どもたちと接する時間を持つことをおすすめします。しかし、その時間は事前に計画する必要があります。なぜなら、その時間を計画しなければ、一日中が気晴らしになってしまうからです。

例えば、私と娘は、予定を立てる時に一緒にいられる時間を4時間という大きな枠で決めます。美術館に行くかもしれないし、アイスクリームを買いに行くかもしれない、図書館に行くかもしれない。何をするかはわかりません。

でも、絶対にやらないことは決まっています。携帯電話をチェックしない、ソーシャルメディアにアクセスしない、仕事のメールに返信しないということです。私はこの時間を娘と一緒におもいっきり楽しみます。逆に私が仕事をしているときは、気が散ってはいけない、邪魔されてはいけない時間だと、娘もわかっているので、スケジュールを組む必要があるのです。多くの人は、一度にすべてをこなそうとするのが問題なのです。それでは、誰も満足しません。

多くの人は、感覚を自分でコントロールできるものと混同しています。それは間違いです。衝動をコントロールすることはできません。コントロールできるのは、その衝動にどう反応するかなのです。
— ニール・イヤール

あなたは、他の人たちやすべてを非難する傾向があり、自分自身が集中できないことを恥ずかしく思っていたと言いますね。その折衷案はどこにあるのでしょうか?

ニール・イヤール氏: まず、何事も非難する人がいるのです。ソーシャルメディアのせいだ、上司のせいだ、子供のせいだ、自分の外にあるすべてのもののせいだ、と責める人です。それは被害者意識からきています。これでは、実際に何かできるようになりません。恥をかくのは、内面的なことからきています。彼らは自分自身を恥じるのです。私がしていることは間違っているのではなく、私が間違っているのです。

大切なのは、非難する者でもなく、恥じる者でもなく、私たちが「主張者」と呼んでいる者になることです。主張する人は、自分がどう感じたかではなく、その感情にどう反応したかについて、責任を主張します。多くの人が、感情を自分がコントロールできるものと混同しています。それは真実ではありません。衝動をコントロールすることはできないのです。携帯電話をチェックしたい衝動、不健康なものを食べたい衝動、タバコを吸いたい衝動があったとします。そして、その衝動を自分でコントロールできるわけではありません。コントロールできるのは、その衝動にどう反応するかです。そのためにはツールキットを用意しておくのが効果的です。そうすれば、気が散って不快な衝動が頭をもたげてきたときに、それに対抗する方法を知っておくことができます。

時間管理は苦痛の管理である、というお話がありますね。私たちは痛みを避けようとしていますが、そもそもその痛みに対処しているわけではありません。もし私が気が散っているとしたら、それは私が不幸だからかもしれません。たぶん、私は正しい場所にいないのです。たぶん、私は正しいことをしていないのです。そして、ただタイムボックス(英語)を使おうとするのではなく、最初の段階でそれに対処すべきなのです。

Nir and Far

ニール・イヤール氏: その通りです。内的トリガー(無意識に次の行動のきっかけとなっているもの)は、次のとおりです。なぜ、スマホを見ずに子どもと一緒に座っていられないのでしょうか?なぜ私は、給料をもらっている仕事以外のことを、いつもやりたがっているのでしょうか?なぜ私は、お酒を飲むことで、他の人と一緒にいることから逃れようとしているのでしょうか?これは絶対に本音です。多くの人がやりたくないと思う不快な仕事が課された時、私は何から逃れようとしているのでしょうか?

気晴らしは常に不快な感覚、退屈さ、怖さ、ストレス、不安、疲労、孤独感から逃れるためのものです。これは第一段階です。3000マイル離れた誰かの問題を心配するためにニュースを見ようが、酒を飲もうが、サッカーをしようが、フェイスブックをしようがそんなことはどうでもいいのです。本当の問題が何なのかを知らなければ、いつも気晴らしを見つけることになってしまいます。しかし、まずは本当の問題を突き止めることが大切なのです。

そのような感覚から逃れようとする気晴らしではなく、トラクション(望むような生活へと導く行動)を引き起こす健全な方法で対処するためのツールが必要なのです。だから、アクティビティそのものが問題なのではないのです。そうですよね?仕事は気晴らしになることもあれば、非常に生産的なものであることもあります。ソーシャルメディアは気晴らしになることもあれば、素晴らしいものになることもあります。重要なのは、私たちが意図してそれらのことを行うかどうか、それが私たちの価値観に沿ったものであるか、あるいは私たちが本当に望むものから引き離すような気晴らしであるかということなのです。

本の中で紹介されているツールについて、簡単にお話しいただけますか?私は色分けされたきれいなスケジュールを何時間もかけて作ることはできますが、それを実行に移すのが難しいです。

ニール・イヤール氏: ヒントやコツなどは戦術です。それよりも大切なのは戦略です。戦略を理解すれば、自分なりの戦術、つまり何をするかということを考えることができます。戦略とは、なぜそれを行うかということです。

スケジュールを立てても、なかなか実行に移せないというご意見ですが、これは時間が経てば簡単にできるようになる練習なのです。ですから、私なら1日だけ、あるいは週末だけ、予定を立てることから始めると思います。分単位でなくてもいいんです。

そして、それがどのような感じか確かめてみてください。正しいマインドセットとは、訓練兵になることではありません。正しいマインドセットとは、科学者になることです。科学者は、仮説を立て、実験を行い、その結果を見て、また実験を行います。時間が経つにつれて、どんどん簡単になっていくのです。

このインタビューの拡大版、およびポッドキャストでの視聴は、こちら(英語)をクリックしてみてください。

Tania Rabesandratana

Science Journalist & Attuned Writer Fellow 2021/22